対局圏(迷人戦)
□スレイプニル交信記録
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市街地を離れ、平野を貫く人気の無い幹線をひた走る。
何事も起こらなければ今日中には後衛の駐屯地に着けるだろう。
そこで軍からの支給品を受け取れば、晴れて正規の手続きが完了する。
そうなれば今のように気を休める間も無くなるだろうパートナーの、束の間の安らぎを妨げる訳にはいかない。
外部からの通信信号を確認しながら、私は思考回路を切り替え回線を開いた。
(コンタクト確認しました、こちら呼称コードSPNL。ご用件は……)
「……やはりお前か、スレイプニル。子供の守りはどうした……」
聞こえてきたのは低く抑揚の無い声。
これは初めてこの人と言葉を交わした時から、少しも変わる事がなかった。
なるべく秘密裏に動いてきたつもりが、もう見付かってしまうとは……
こちらはまだ、回線の向こう側の相手の大まかな所在さえ確認出来ていないと言うのに。
(あの子ならここにいます。この星に来てから、ずっと貴方に会う事を待ち望んでいましたよ)