裏かどうかは微妙なところ
□『竜鱗の鎧』
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@目線の先
物とか景色とかそういうのじゃなくて、そういうのは実際一緒にいれば嫌でもおんなじモノを見ているワケで……
でもソレを何とか説明しようとすると、いつものあのめんどくさ気な視線が振り返ってくる。
開き掛けた口がお定まりの台詞を言う前に、外套の後ろ袖を引いて目を閉じれば、あからさまなため息が一つ落ちて来た。
続いて瞼の向こう側に影が差し、頬へと触れる指の上の手甲がカチリ、と音を立てる。
ざらついた指先の皮膚が耳朶の裏をなぞり、その感覚に鳥肌を立てながら額へのキスを受けた。
「行くぞ」
そう言いながら離れてゆく暖かさにゆっくりと目を開ければ、既に歩き出している後ろ姿が朝霧に遮られ霞んでいく。
その背からはぐれてしまえば、物とか景色とか、それからもっとたくさんを隣で見る事も出来なくなる。 おんなじモノを一緒に見るのは嫌じゃないから、その背を追って着いてゆくのも悪い事じゃない。
だから、何時もよりずっとゆっくり離れて行く背中へと、目線を定めて走り出した。