文(伝奇物多し)

□道奔る
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 今また幾つもの影が近づき遠ざかっていく。
 たとえ誰の記憶に残らずとも、己の道をひた奔る。

 かつて不倒と呼ばれた大樹は戦火に焼かれ、その幹も根もことごとく灰となった。
 しかし、宙を舞い落ちる木の葉達は父なる灰の上に折重なり、その志を葉脈に写し取った。
 やがて芽吹く次なる者達の為に。



 夜を歩く者がいる。
 降りしきる火の粉をその身に受け、地を覆う灰塵を踏みしめて、あるかなきかの道を行く。
 遥か彼方に明けていく、新しき朝を目指して。
 身に纏う黒き衣、闇に浮かぶ雲を染めるは、暁。

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