文(伝奇物多し)
□水面上下
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何処とも知れぬ小国の、隣国との境も兼ねた湖沼地帯があった。
辺りの農民などはおよそ近づくことのない場所であったが、やれ古戦場だの底無し沼のといわれるそこは今、じわじわと生者と死者とを温んだ水に引き込もうとしていた。
はっきりと言えば、この任務は失敗だった。
さらに言えば、この隊の誰もがそうなることはハナから知っていた。
承知の上であるわけもないが、断る権利も勿論なかった。
度重なる戦乱で数多の忍達が死に、仕える国をなくした結果、路頭に迷い盗人のまねを働く者が後を断たず、それがますます状況を悪くした。
依頼を蹴れば、二度と声はかけられない。だから指示に頷いた、ただそれだけのことだった。