文(伝奇物多し)

□水面上下
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 湿地特有の重苦しい風は今、其処此処で上がる血煙を孕んでむせ返るようだ。
 返り血でぬめる利き手を短刀ごと帯で拭い、辺りの気配を探れば、敵味方合わせて十人あまりというところか。手持ちの忍具は底をつき、今手にしている得物も、元の持ち主はとうに息絶えていた。
 どちらかの全滅までやり合わねばならないか。
 前後からじりじりと間合いを詰めてくる追手に、俺は殺意と共に向き直った。 
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