文(伝奇物多し)

□弐話
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 日も傾き人も疎らな野畦道を歩く、二人連れの姿があった。
 そのうち一人は、目深に被った笠で人相こそ分からぬものの、旅慣れた装いと脇に差した刀から、およそ堅気の者ではないと知れる。
 今一人は女、青味掛かった銀の髪に濃い緑色の目をしている。男並みに背丈があり、遠目からは鮮やかな色彩の美丈夫とも見えるだろう。
 会話らしい会話もなく黙々と歩みを進める二人だったが、その足はいつの間にか街道を逸れて山門をくぐり、苔に覆われた石段を上っていた。
 
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