ナインコール

□@森に“北”さん
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 どんどん血の匂いが強くはなってくるが、生きた者の気配はない。
(昨日は何もなかったってばよ?)
 そう思い返しながら忍び寄る。
 そこには、黒ずくめの男が一人、俯せに倒れていた。


 ほとんど乾いてしまっている飛び散った血痕が、辺りの草木や地面に斑模様を作っていた。
 男は黒い外套を羽織ってはいたが、その背面は切り裂かれ、血に染まった背が覗いている。
 ひび割れた奇妙な面がそこに乗せられており、それがこちらを見ているような気がした。
「何なんだってばよ……」
 そう呟き、視線を別の場所に移す。
 血溜りの中に投げ出された腕を見れば、その手の爪は黒く染められ、“北”の文字が刻まれた指輪をはめていた。
「こいつ…何なんだ……」
 またしても妙な違和感を感じ、更に視線を動かした。
 そして、その先を足に転じたところで、指を差して大声で叫んでいた。
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