憂鬱
□弟以上・友達未満
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思えば、俺の“古泉一樹”に対する第一印象は、決して間違ってはいなかった。
【弟以上・友達未満】
『古泉一樹です。よろしくお願いします』
確か第一声はこうだった。
あの時は、気付きようも無かったが、アイツは初めから、何か…“危うさ”みたいなのを持っていた。
「キョンくん?」
「あぁ、悪い。俺の番か」
例の如く、俺達はボードゲームに興じている。
背後の朝比奈さんの嗚咽を除けば、此処数日は至って平和だ。
長門はいつものように窓辺で読書をしているし、朝比奈さんは今日は所謂、ゴスロリとやらを着せられていた。
黒のひらひらしたワンピースに、レースだらけのヘッドドレス、レース付のニーソも忘れない。
純白の天使も悪くないが、程良い毒味を含んだ小悪魔も悪くない。
何が良いって、左の高い位置で結われたウェービーのポニーテールが似合いすぎてて、今なら全校生徒を敵に回せそうだ。
「朝比奈さんは可愛らしいと思いますが、少しはこっちにも集中して下さい」
磁石内蔵のオセロの駒を、同極のを無理矢理くっつけながら古泉がボヤく。
拗ねてるのか、可愛い奴め。
「えぇ、拗ねてます。貴方が相手にしてくれないので」
「うるさい。可愛い人を可愛いと言って何が悪い」
「悪くはありませんが、未だ貴方に負け続きな僕としては悔しいです」
「あぁ、そうかい。―――って、それは卑怯だろ!」
古泉は今将に、角に置かれた黒を白に引っくり返そうとしてやがった。
子供みたいな奴だな。
「じゃあちゃんと相手して下さいね。今日こそは勝ちますから」
「そいつは聞き飽きたな」
「どうぞ、何とでも」
そう言って古泉は、今度は対極をくっつける。
その仕草が妙に子供っぽくて、きっとハルヒがいない所為なんだろう、少し気が緩んでるんだ。―――俺も古泉も。
普段はムカつく野郎だが、こういう古泉は良いと思う。
何だか第一印象を思い出すようで。
「なぁ、古泉」
「はい?」
「俺の、お前に対する第一印象――教えてやろうか?」
「何でしょう?」
ぴったりとくっついた2つの駒が視界の端に映る。
俺は衝動的に古泉の頭を撫でながら、
「“弟がいたらこんな感じかな”」
と、言ってやった。
―――パタンと厚物の洋書が閉じる音がする。
帰りの合図だ。
「決着は明日付けてやるよ」
机の脇から鞄を取り、団長席に置かれた部室の鍵を持つ。
ふと見れば、複雑な表情をした古泉がいた。
+++end+++
乙女泉と微妙なキョンが好きです。(ガチも好きだけど)(´ω`)