憂鬱
□過去拍手倉庫
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僕と彼の話。
僕の恋人はちょっと可笑しなあだ名の人です。
本名は知りません。
知ろうと思ったこともありません。
名前なんて些細なもの。
ただ呼んで、彼がその名を自分と認識し、返事を返してくれればいい。
便宜上の些細な、でも必要なもの。
例えば彼に名前が無かったら。
僕は彼を呼ぶとき、…戸惑う。
例えば僕に名前が無かったら。
彼は僕を呼びはしないだろう。
僕という存在に確かな確証はない。
ほんの数分前、彼の神が世界を書き換えてしまったかもしれない。
けれど僕らにその事実を知る術はない。
神が無意識下で行う行為は人間には知り得ないサンクチュアリ。
かみさま かみさま
貴女はいずれ僕から彼を奪うでしょう。
どうかその時までは、貴女が彼を本当に必要とするその時までは、僕から彼を取らないで下さい。
【そうして神は僕という愚かな道化を嘲笑し葬るんだ】
ああ、いずれ襲い掛かる運命ならばいっそ…。
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