06/30の日記
11:58
七夕SS
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「晴れたなぁ―」
昼間は雨がちらついてくれたおかげで、夜は雲一つ無い星空を拝めた。
「迷惑な晴男だな」
「雨男よりええやろ。雨が降ったらせっかくの天の川が台なしや」
「雨が降ったら、オレはお前と夜中出掛けずに済んだ訳だが」
「まぁええやん」
何故星を見なければならないのか。
所詮、あれは燃え滓だ。
「対岸の火事だな」
「何?」
「星が光って見えるのは何故だか知ってるか」
「いや」
「遥か遠くに惑星があって、それが燃えて、その炎の光が、こっちにまで届いてるんだ。惑星の大火事を、オレ達は綺麗だっつって見てんだよ」
「成る程、それで対岸の火事ねぇ」
「判ったか。なら帰るぞ」
「なら尚更見とかな」
「何で」
「惑星はんの生き様を、誰かが見届けたらな、惑星はんも気の毒や」
「面倒くせえ」
そう言いながらも、踵を返しかけた足を元に戻した。
「じゃあ天の川は誘爆でもあったんかな」
「さぁな」
「織姫と彦星は火事挟んで会うとるっちゅー訳やな」
「かもな」
織姫と彦星なんて所詮は空想のキャラクターだ。
そんな奴らが年に一度会おうが会うまいが、そんなことはどうでもいい。
でも、天の川は確かに実在するんだ。
なら、そっちの方が主役でいいんじゃないか。
織姫と彦星はどこか別の場所で会えばいい。
「何だかんだ言うて、星、好きなんやん」
「そんなんじゃねー」
そう言いながら、ずっと天の川を見ていたことに気付いた。
「大体、年に一度しか会えない奴らに願い事したって叶うわけ無いだろ」
「そりゃそうや。星の河にお願いした方がよっぽどご利益ありそうや」
「それはそれで不謹慎だと思うぜ」
「今ちょっとええこと言うたのに」
ふて腐れていると、不意に重みを感じた。
目を向ければ、そこには愛しい寝顔があった。
「しょーがないなぁ…」
軽々と抱き上げ、小さな身体をおぶさり、一度も振り返ることなく、帰路を辿った。
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甘い話がないなぁ…。
梅雨時期はセンチメンタルでアンニュイです。
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11:32
七夕SS
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「織姫と彦星の話って知ってます?」
「愛し合った男女が年に一度しか会えない話だろ?」
「その日が、7月7日だそうです」
「だな」
「ラビは、一番好きな人と年に一度しか会えないとしたら、どうします?」
「ん――………」
ラビは読んでいた本から目を離し、考え込むように唸った。
いや、実際考え込んでるんだろう。
例えば僕が、年に一度しかラビと会えないとしたらどうだろう?
その時はきっと、何を捨てても会いに行くだろう。
天の川だろうと三途の河だろうと越えて会いに行く。
「どうもしない」
「はい?」
「多分、どうもしないと思う」
「それは…何故?」
「だって、会えない日なんて、今までも一杯あったし、年に一度じゃないけど、今年入ってアレンと会った日数なんて、片手で足りるほどさ」
「その節はどうも」
「大体、父さんなんて三年に一度会えるかどうかも怪しいさ」
待つのって結構辛いんさ、とラビは茶化すように笑いながら言った。
確かに、マナのように、もう絶対会えないと判っていた方が、意外に割り切れるのかもしれない。
師匠は生きているか、死んでいるかも判らない。
「どうせ、待つのには慣れてる」
珍しく、雨が降っている。
これじゃ、天の川は見られない。
雨が全てを流してくれればいい。
ラビの憂鬱も、僕の失言も。
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