現し世の夢

□第一話 斜陽郷
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―――斜陽郷


赤い花に囲まれた都。
鬼妖界シルターンの住人がひっそりと暮らす場所。
ヒナギクが仕える龍神の里。



ユリカの印象としては、江戸時代の都市を彷彿とさせる街並みがまず第一。
そして、人間と妖怪が共存した絵巻物のような風景だ。
実際のシルターンは、人間と妖怪は干渉をしないことを不文律としているそうだが、ここではそういった関係ではないらしい。
外部からの来訪者は白い目で睨みつけられるようだが。





「ここがウコン様の館」


そこは里で一番大きな屋敷だった。
斜陽郷自体はそれほどの規模ではないから目を見張る程ではないが、それでも十分大きい。


「ちょっと待っててね」


ヒナギクはそう言いおいて、門を守る兵士に近づいた。何事か話していたが、離れているので聞き取りにくい。
だが、戻ってきたヒナギクの顔をみる限りは問題無さそうではある。


「もうすぐ日が暮れるし、お屋敷に泊まって貰うから」


嬉しそうに言うが、こちらはOKした覚えはない。
そう突っ込むと、いいじゃないと言って取り合わない。

そうこうしているうちに使いがやってきてしまって、有耶無耶な内に会話は終了した。
まあ、別に不都合な事はなかったから従ったのだが……。




―――向こうはどうなのやら。


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