現し世の夢
□第二話 絆のカタチ
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三人は途中にある町で、いったん荷車から降りた。
と言うか、元々この荷車の行き先がここだっただけで、彼らは御者の好意に甘えただけに過ぎない。
しかし、ゆっくりと休める場所で腰を落ち着けたかったのも事実だった。
「と言うわけで、買い物に行くわよー!」
宿を取って荷物を置くと、ユリカが唐突にそう言った。
「いきなりどうしたの?」
「だって、目立つじゃない。ヒナギクの格好」
当たり前だが、シルターンの装束はリィンバウムのそれとは全く異なる。
「でも、この世界に移住した人達は、別に服装を変えたりしてないよ?」
「まあ、確かにそうなんだけどね」
苦笑しながら、レグが意図の説明に入る。
ヒナギクを追ってくる者がいるかもしれない状況で、目立つのはできるだく避けたいことだ。
そしてその点では、ヒナギクのミコ装束は不都合なのである。
確かにシルターンから召喚された人間が、町を普通に歩いている光景を見かけるのはあることなのだが、本当はごく稀なことなのだ。
第一、民族衣装に類する物はそれだけで十分な特徴になる。
例えば、『シルターンの服を着た少女を連れた二人組』について聞き込みをしたらどうなるだろうか?
「どの道、雷で焦げ気味の服をいつまでも着させるわけにもいかないし、着の身着のままだったから着替えとか無いでしょ?」
図星。と言うか、当たり前か。
「じゃ、ちゃっちゃと行きましょ?かわいい服見つかれば良いけどな〜」
「うん、じゃあ行ってらっしゃい」
「レグも行くのよ、荷物持ちは男の子の仕事でしょ!」
実際に腕力があるのはユリカの方なのだが、レグはため息をつく以外は何も言わずに従った。
そしてヒナギクはその様子を見ながら、ぼそりと呟く。
「こーゆうのって、カカア天下って言うんだっけ?」
本人たちに言ったらぶたれそうだった。
―――レグが。
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