まほろ駅前

□全治1ヶ月
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「お大事に」



行天の時に顔見知りになった看護師に見送られ多田と行天はまほろ市民病院を出てきた。
見れば多田の右腕はきっちりとギブスで固定されてる。

「本当にお人好しだよねアンタ」


行天の言葉に多田は溜め息で返事をし、自分の右腕を見た。多田は右腕を骨折したのだ。治るまで1ヶ月はかかるらしい。
何故骨折したかは数時間前にさかのぼる。

この日、多田便利軒には換気扇修理の依頼が一件入っていた。
行天が多田に指示された工具を手渡し、多田はそれを受け取り黙々と作業を進め修理はすぐに終わった。修理完了の報告もそこそこに依頼主の家を出て二人は停めていた軽トラへ向かったのだ。
先に行天が乗り込み、多田も乗り込もうとドアに手をかけたとき多田の横を小さな女の子が走って行った。
何だと見やれば女の子がボールを追いかけ道に飛び出そうとしている。
おまけに車も走って来ている。

「危ないっ!!!!!!」



頭より先に体が動いた多田は走り出していた。
車にぶつかる寸前、多田は何とか女の子を助ける事ができた。多田が抱え込んだおかげで女の子は無傷だったがその時の衝撃で多田は右腕を折ってしまったのだ。
その後、病院へ運ばれ処置を受けたのち、何度も女の子の母親に礼を言われ現在に至るのだった。

「これじゃしばらくは仕事休むしかないな…」

「そうだね」

こいつはどうしてこうも能天気なんだ…俺が代わりに働くよぐらい言えないのか。と思った多田だったがそれと同時に無理か、とまた溜め息をついた。
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