まほろ駅前

□繋がれた手
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「多田、したい」


子守りの仕事を終えた後、特に会話も無く二人で酒を飲んでいたら隣に座っていた行天が唐突に言った。
ソファーに足をあげ、行天の方へ向かい座り直すと抱きしめられた。


「…いいぞ」

行天の背中に腕をまわした多田は珍しく自分から口付けた。


「珍しいね」

「そうか?」



深い口付けと共にソファーに二人で倒れこむ。
いつもより激しく長いキスに多田は戸惑った。息継ぎすらまともに出来ない。
流石にやばいと行天の背中を叩き、息も絶え絶えに苦しいと訴えるとやっと離された。


「っはー…っ、限度というものがっ、はー…っ、あるだろ、バカ…っ」

「ねぇ、口でしてくんない?」

「…は…?おわっ!」



こいつ…聞いちゃいねぇ…

ぐいと頭を引っ張られて前のめりになる。
どうしたんだよ今日は。やけに激しくないか?

ねぇ、とねだる行天の顔を見上げるとなんとも切なそうな顔をしていた。

なんて顔してんだお前。




「…初めてするんだから期待するなよ」






くしゃりと髪を撫でられる。
やっぱり初めてで勝手が分からない。こんな感じでいいのだろうか。
勃起しているということはイイということなんだろうが。


「んぅっ…気持ひぃ、は?」

「そこそこに…っ」

「…っらから、言っらろ…ぅん…っ?!」



回らない舌で期待するなって、と言葉を繋げようとしたら頭を押さえつけられ深く銜え込まされた


「怒んないでよ、多田がやってるってだけで超クるんだからさ…っ」



喉まで突かれむせそうになった多田のジャージのズボンの中にするりと行天の手が滑り込んで来た。
そのうえ下着の中の自身を直接掴まれたものだから多田は思わず声をあげそうになったのだが口は行天のもので塞がれていたのでくぐもった音しか出なかった。


「あれ?多田の、濡れてるよ。俺の舐めて感じちゃった?」

「ふっ、んぅ…っ」


いつの間にやら勃ち上がって蜜を溢し始めていた自身に驚いた多田だったが、数回自身を扱いた行天の指が後ろへ侵入してきて更に驚くことになった。
一本ずつ指を増やされ慣らされていく。


「多田、口止まってる」


行天がもう片方の手で行天のもの銜えたままの多田の髪を梳かし続きをするように促した。

無茶言うなよ!と内心すごくツッコミたかった多田だが、まぁ今日ぐらいは大目に見てやるか、となんとか快楽の波に流されまいと堪えつつ口を再度動かし始めた。


「は、多田…もう、放していーよ…っ、あんたの中、入れたい…いい…っ?」


顔を上げた多田がこくこくとうなずくと、ソファーに押し倒し、足を持ち上げ、行天は腰を進めた。
すべてを収めたらしい行天が激しく腰を動かし始めた。


「ふっ、ぅあ…っ…んっ…行天っ…」

「多田…っ」


多田が果てたのとほぼ同時に行天も多田の中で果てた。
多田が行天の名を呼ぶと、ぎゅう、と行天に抱き締められた。





「…多田は、俺のこと好き…?」

「ー…っ、行天…?」



「もう…ひとりは嫌なんだ…」


ぽたりと何か冷たいものが多田の頬を伝った。
抱き締められていて行天の顔は見えないが、それは止まることなくぽたりぽたりと流れ落ちてくる。

泣いているのか…?



「こわがらなくていい…ちゃんと好きだよ。お前こそ…どこにも行くな。」



うん。と頷く行天だったがまだ涙は止まらないようだ。
先ほど握ってやれなかった手を握る。
どうしてあのとき行天の手を握ってやれなかったのだろうか、握ってやれていたら少しは楽になっていたのかもしれないのに。



「…なぁ、もう泣くなよ行天。俺に幸福は再生するって教えてくれたのはお前じゃないか…お前に俺は救われた。…俺にお前は救えないのか?」



なぁ、何がそんなにお前を苦しめるんだ?

答えも聞けないままに行天に唇を塞がれた。







ただ、耳元で微かに「ありがとう」と聞こえた気がした。









END

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