君だけが知る秘密
□憂鬱
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今日はプール開き。
女子生徒からしたら、プールに入れて嬉しいのかもしれないけれど。
僕にとっては憂鬱続きだ。
「相棒…こんなところにいたのか?」
プールバッグを肩にかけ、もう一人の僕が僕を探しにやってきた。
「杏子から聞いたぜ。お前いつもプールの授業の前になると体調が悪くなってトイレに駆け込むらしいな。水恐怖症なんて、俺聞いたことないが……」
女子トイレの鏡の前で顔を洗う僕の隣に彼女がのこのこやってきた。僕はため息をつく。
「もう一人の僕…………杏子に言われたとはいえ、それほんとに信じた?」
「え……」
呆れて言う僕の言葉に対し、なんの事だか分からないといった様子のもう一人の僕。
「僕……別にプールに入るのが嫌いな訳じゃないし、水恐怖症でも無いよ」
じゃあなんでだ?といわんばかりのもう一人の僕の表情。ほんとだったらこんなこと説明するのも恥ずかしいんだけど……仕方がないから僕はもう一人の僕のプールバッグを指差しながら言ってあげることにした。
「僕じゃ着れないでしょ、それ」
それ、が指しているのは女子用スクール水着であるということは言うまでもないだろう。
もう一人の僕は、僕の顔と自分のバッグの中に入っている水着を見比べて、「あぁ、なるほど」といった顔をした。
「……相棒も大変なんだな」
「……まあね」
ほんとにそうだ。僕は心の中でため息をつく。
見学とはいえ、周りを見渡せば水着姿の女子、女子、女子………。年頃の男の子には刺激が強すぎるよ。
プールの授業中、この状況でいたたまれなくなって一度抜け出したのは秘密だ。
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