小説

□それなのに
1ページ/1ページ




「君へ返そう、受けてくれ」


友人帳は、表紙だけになってしまった。それは、つまり、妖たちに名を返しきったということだ。それなのに、にゃんこ先生は何も喋らない。いつもなら、返したことを耳を塞ぎたくなる程に怒るくせに、今日は何の文句も並べなかった。声を掛けることも出来なかった。何も言えなくて、気まずくて、俯いてから気付いた。いつの間にかにゃんこ先生はいなくなっていた。

そうだった。にゃんこ先生と、友達になったつもりだったけれど、にゃんこ先生は元々、友人帳をあげるって約束で守って貰ってたんだ。友人帳が無くなった今、おれの傍にいる必然性はないんだ。友人帳なんて無くても、友達になれると思ってた。妖と人はずっとずっと、交わることなんてないのに。妖なんて嫌いだったじゃないか。その頃の気持ちを思い出せばいいんだ。にゃんこ先生だって、友人帳目当てにおれの傍にいた、やな奴だ。そう、友人帳、目当て。

おれが死んだ方が、友人帳が手に入って、目標は簡単に達成されたのに、いつもいつも守ってくれた。暇潰しだなんだっていつも助けてくれたあの姿は、本当に、偽り?馬鹿やったあの時間の笑顔は、造り物?なあ、にゃんこ先生。それなら、おれを早く食っちゃえばよかったのに。腹は立つけど、おれ、きっと先生のことは嫌いになれないと思うから、食っちゃえばよかったんだ。こんなにあったかい時間を刻みだ心を置き去りにして消えるなんて、狡いよ、馬鹿にゃんこ。


「あの馬鹿にゃんこめ…今日はエビフライなのに…知らないからな」

「なに!?本当なのか、夏目!」

「………先生、馬鹿だろ」


がさ、と音を起てて、木の上から草むらに落ちてきたにゃんこ先生まで歩み寄って、腰を屈めると、謀ったな、って…。先生が単純すぎるんだよ。バツの悪そうな先生を抱き上げて、逃がさない様にぎゅっと抱きしめれば、ばたばたと短い手足を暴れさせた。往生際悪いなあ、もう!左腕で小さな(いや、猫にしては大きいけれど)体躯のにゃんこ先生を締め上げて、右手て作り上げた拳を、ごつん、と振り下ろせば、何をするんだと言いたげに眉間に皺を寄せた先生と目が合った。これは、離れていこうとした罰だ。そして、別離のための言葉を紡ぐ口を塞ぐ為のげんこつ。

行かないで。離れていかないで。ずっと傍にいて。先生のこと大好きなんだ。引き止める言葉を言いたいのに、素直になれない唇を、口惜しげに噛み締めれば、代わりに涙が溢れた。にゃんこ先生のちっさな可愛げのない目が丸くなった。心配そうにおれを呼ぶから、涙が止まらなくなった。離れるなら優しくしないで。優しくするなら傍にいて。そう思うのは可笑しいことだろうか。


「先生、友達になってよ…」


友人帳を持たないおれが、にゃんこ先生と一緒にいられる唯一の方法。おれが、先生の友達になることだ。嗚咽を漏らすおれに、勝負はしない、なんて言っておれの腕から擦り抜けた。先生が離れていく。おれは気付くと、その背中に叫んでいた。


「おれは、夏目レイコじゃない!」


そんなもので縛る友人なんて、おれは欲しくない。おれは、友人帳なんていらない。命令出来る存在が欲しいわけじゃないんだ。勝ち負けで得た友人なんて望んでない。それでもにゃんこ先生は止まってくれない。近くに転がっていた柔らかいボールを手に取って、おれはにゃんこ先生に向けて投げた。にゃんこ先生はボールを軽く避けて振り返った。


「私は人間が嫌いだ」


おれは目を瞠った。人間が、嫌い。胸を刔られた感覚に襲われた。なんで、そう言いたいのに喉は震えなくて、掠れた音だけが漏れた。なんで、なんて変なことを言う自分に、笑みが漏れた。ついこの間まで妖が嫌いだったのはどこのどいつだろうか。愚問じゃないか。


「勝手に友人などという言葉で縛っておきながら、私を残して短い一生を終える。夏目、お前もあっという間に老いて死ぬだろう。」


おれは垂れた頭をのろのろと持ち上げて、にゃんこ先生を見た。小さな身体がさらに小さく見えた。たまらなくなって、おれはにゃんこ先生を抱きしめた。そんな悲しいことを言わないで、先生。別れても残るものはきっとあるよ。だから、どうか。おれの我が儘を聞いて。泣くのを堪える幼子の様に、にゃんこ先生はおれの肩に頭を預けた。背中を撫でてやれば、目を細めて、憎まれ口を叩くことが仕事の様な口を閉ざしたその弱々しい姿が、たまらなく愛しかった。


【それなのに】


(お前から離れられない。)
(そう言って先生は口を閉ざした。)




-----------------------------------


遅くなりました´`;;
湊ちゃんお誕生日おめでとry←
…遅すぎてごめんなさい…←
切腹出来ないんで罵って下ry←

夏目×にゃんこ先生

です。夏目×先生!←
大事な事なんで2回言いました

なんかお祝いものなはずが
暗い感じに…申し訳ない。

予定ではエビフライに釣られて
いつも通りなギャグが…
あれ(´・ω・`)←←←←

性格が暗いとこういう風に
なります←残念すぎる奴

ごめんなさい(´・ω・`)

取り敢えず、毎度ながら
愛だけは詰まってます!!!
よかったらどうぞ!!!

巡廻恭時




------------------------------------

…というわけで、恭ちゃんからいただきました誕生日祝いです!

…………いつの話だよっていうツッコミはいらない^^^^^^^^^^^^^
分かってる^^^^^^^^^^^
しかもメールの返事超遅くなって本気で土下座したかった^^^^^^^^^^^^^^^
でも萌えるよね^^^^^^^^^^^^^^^^^^
たまんないよね^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
相互依存って…いいよね^q^←

というわけでありがとうございましたー!><







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ