小説C

□幻を見るほど
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足音がするだけで期待してしまう自分が嫌だった
期待して、裏切られる事よりもそうやって何度も何度も期待する自分が嫌だった

俺だって、ちゃんと分かってる
期待したって無駄って事くらい、ちゃんと分かってる
けれどきっと、心がそれを分かってない
分かろうと、していない


勇人くんに会いたい、ただそれだけを考えてしまう
気分転換に買い物に来てみたのに、これじゃあまるで意味がない
普段だったら元々ちょっとした距離のある生活をしてるし、普通に全然平気なんだけど、今日は駄目だ
理由は分かる
昨日、会ったからだ
昨日会って、楽しくて楽しくて、楽しくて
忘れられなくて、だからどうしようもなく会いたくなるんだ


「勇人くん………」


名前を呼んでも答えてくれるはずないって分かってるけど、俺は呼ばずにはいられなかった
そうしないと、俺はもうパンクしそうだ


『……呂佳さん』

「勇人くん!!?」


声がしたから振り向いてみたら、明らかにどん引いた顔の知らない人が立っていた
………どうやら幻聴まで聞こえるようになったみたいだぞお
俺は曖昧な笑顔を浮かべて(それだけでもっとひどい顔をされた。何でだ)元の方向を向いた

……勇人くんじゃなかった………


少し落ち込んだけど、でもやっぱり、俺の頭の中はすぐに勇人くんでいっぱいになる
それだけ、会いたいって事だろうなあ
…勇人くん…会いに来てくれたらいいのに


その時、ちらっと俺の目に見えたのは


「勇人くん!!?」


見ていた品物を放り出して、俺は走った
勇人くん、勇人くんが居る……!
そして追い付いた俺は、勇人くんの腕を掴んだ


「勇人くん!!」


でも―――


「………………違います」

「あ………すみません」


似てるけど、違う人だった
…………また間違えたぞお……

会いたいからこんなに幻聴が聞こえたり見間違えたりするのか
それなのに会えないだなんて、俺はどうすればいいんだ
……そう思うと、悲しくなってきた


「…っ………う……ゆっ、勇人ぐぅん……う゛っ……う゛わあぁああぁぁあああん…」

「…………………」

「う゛わぁあ゛あ゛あぁ゛ああん」

「………………」

「ゆ゛……勇人くぅん………!!」

「……………」
















「……いい加減離してくれませんか」






幻を見るほど
(会いたいんだぞお………)







すみませんでした。

……もうそれしか言えません^q^

本当に遅くなってしまいましたが相互して下さりありがとうございました!
これからもよろしくお願いします!


ではここまで読んで下さりありがとうございました!



※藍坂朱音様のみお持ち帰り可




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