授業中によく分からない動きを始めた石田の巻き添えをくらって、先生にお説教を受けてから、一週間が経った。
石田は今日も相変わらず私の隣の席で、ぱっと見ただけでは何を書いているのか分からない本を真面目な顔で読みふけっている。
「おはよ、石田」
徳川に仲良くしてくれと言われたからではないが、毎朝挨拶だけは欠かさずしている。まぁ、いつも「あぁ」とそっけない返事が返ってくるのだが。
けれど、今日は何故か反応が違った。
真剣に本に向けられていた視線が勢いよくこちらに向いたかと思うと、がたっと立ち上がり、私の手を思いきり握ってきた。
「え!?え!?」
驚きで処理が追い付かない私の頭をよそに、石田くんは手に力を込めた。
「貴様が、聖なる救世主(メシア)なのか……?」
「はい?」
「そうか、そうだったのか」
何がそうなのかまったく分からない。聖なるメシア?何それ怖いんだけど。
「え?どういうこと?」
「そんな下手くそな芝居をしたって、全て私には分かっているのだ」
「芝居なんてしてないけど!?」
何もかもを見透かしてる風な顔をしてるけど、それは石田の気のせいだ。
「分かった……そこまでしらばっくれるというのなら、絶対的な証拠を言ってやろう」
何とも自信たっぷりに言う石田に、少しだけ臆する。もしかしたら……なんて思いが頭を掠める。
「それは今朝の話だ。床に着いた私の夢の中に秀吉様が出てこられたのだ。秀吉様はいわば神……いや、神以上の存在だ。覚えておけ」
秀吉様って人すげえええええ!神以上の存在とかどういうことなの!?
「出てこられた秀吉様は、私にこう言ったのだ。『翌朝一番に話しかけてきた女が聖なる救世主(メシア)だ』と。そう!つまり貴様が!聖なる救世主(メシア)なのだ!」
びしぃ!っと効果音が付きそうなほど勢いよく私を指差す石田。けれど、それって要するに。
「石田の思い込み、だよね……」
「貴様ああああ!秀吉様を愚弄する気か!いくら私の妻になる相手であろうと、秀吉様を悪く言う奴は許さない!」
石田のボルテージが一気に上がって私に迫ってくる。とても怖いけど、それ以上に気になる言葉が聞こえた気がした。
「え……?妻って……?」
「聖なる救世主(メシア)なくせしてそんなことも知らないのか?私、闇の支配者と貴様、聖なる救世主(メシア)は、光と闇が争わぬよう婚姻関係になっているのだ。私たちが生まれる前からそう決まってる」
急に壮大な話になった。
「私、石田の妻になる気は無いんだけど」
「私だって貴様をめとる気など毛頭無かったが、こうなれば仕方ないのだ」
「いやいや、第一、私たち付き合ってないよね?」
「もちろんだ。あぁ、なら付き合えばいいんだな?では、貴様、私と付き合え。拒否は認めない!」
「えええええ!?は、はい……」
鋭い目付きで睨まれながら人生初の告白(拒否権はなし)を受ける私。あまりの顔の怖さに頷いてしまったことを、数秒後に後悔するのだった。


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