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約束
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月の綺麗な夜。

静かな薄明かりの部屋で、綱吉は雲雀の腕の中にいた。
触れ合う肌が気持ちよくて、絡めた指を遊ばせて。

「ヒバリさん」

小さく、でもはっきりとした声で呼ばれた名前に彼は視線で応える。
綱吉は眉を下げ、困ったような笑顔で。

「オレの我儘…聞いてくれますか?」

大切な人たちを守るために、その人たちを危険にさらすことになっても。

「そんなの、いつものことじゃない」

「いつも我儘言ってるのはヒバリさんですよ!」

「そうだっけ?」

ヒバリは悪戯っぽく口元だけで笑ってみせる。

「僕のは我儘じゃなくて、当然の権利だよ」

君は僕のモノだからね、と綱吉の額に口付けながら、抱き締める腕に力を込める。
そうすると綱吉は小さく身動ぎ、目を伏せる。昔から変わらない癖。
その仕草が可愛くて、愛しくて、離したくないと思ってしまう。

「十年前のみんなのこと、お願いします」

「わかってる。誰も死なせないよ」

自分の痛みより、誰かの痛みを辛く感じる君だから。
君を傷つけるものは許さない。だから誰も死なせない。

「もちろん君も死なせない。勝手に死んだり傷ついたら許さないよ」

言いながら雲雀は指を絡めたままの綱吉の手を引き寄せ、その手の甲にちゅっと口付け頬を寄せる。
綱吉に跡を残していいのは自分だけという独占欲。
本当なら、誰の目にも触れないように閉じ込めてしまいたい。そんな衝動を、雲雀は押し殺していた。
まったく雲雀らしくない。
でも、雲雀は決して綱吉が嫌がることをしないのだ。
彼は囲いの中で飼われることで、彼らしさを失うだろうことを雲雀は知っている。
彼が大空である意味を。

「ヒバリさんも、あんまり無茶しないでくださいね」

心配そうに揺れる鳶色の瞳が映すのは自分の姿。
今はそれだけで雲雀は満足だった。

「心配ないよ。僕は強いからね」

雲雀らしい言葉に綱吉はほっとしたようにふにゃりと笑い、雲雀の胸に頬を擦り寄せる。
互いの体温を感じながら願うのは、愛する人たちにやさしい未来。


10年後も、20年後も、ずっとあなたの隣に。
願いにも似た僕らの約束。






-END-

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