頂き物 / 捧げ物

□平行線上の交点
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黄色と赤。
見た目も中身も両極端な二人が永遠に交わることのない線であることは誰もが知っている。

そう、当の本人達さえも。
軍事行為や日向家における守護神という名の長女が発動する強制ルールは必要最低限度内に含まれるが、それ以外に一緒にいる姿をケロロは見たことがない。
しかしそんな稀有な状況が、現実味のない作戦を言うだけ言って終了した侵略会議の後も続いていた。

しかも、非常に迷惑なことに隊長ルームにて。

「邪魔なんスけど」
「だったら貴様が消えろ」
「クックー俺様の高度な言語は筋肉しかない脳みそには理解不能らしいなァ」
「フッ…良く分かったぞ、クルル。貴様のそのダラけた脳細胞は俺が叩き直してやるッ!」
「やれるもんならやってみな?」

ヘッドフォンに手を掛けたクルルと、どこから出したのか分からない数の銃器を構えるギロロ。
最愛の趣味の時間にまで及んだ騒動に緑色の後頭部の安い我慢も限界に達した。

「うぜーッ!!」

思いの丈を込めてその辺にあったクッションを手当たり次第に投げつける。

「ク?…ムギョ!?」
「うおッ!」

武闘派な彼には惜しいところで避けられたが動体視力で劣る参謀には見事にヒットした。

しかしそれが本来の目的ではないケロロは珍しく喜ぶ素振りもみせずに言いたいことだけを叫ぶ。

「朝から何なんでありますか、オマイ達は!我輩の至福の時間を邪魔しないでチョーダイっ!」

邪魔しなけりゃ好き勝手に殺り合って良いから、という心の声が足元に散らばったプラモデルのパーツ達から読み取れる。
使い方は間違っているが稀に見るその隊長らしい気迫にギロロがたじろいだ。
「お、俺はお前を守ろうとだなぁ、」
「は?何から?敵性宇宙人の欠片も見当たらないでありますよ」
「うぐッ…」

口下手な男は尤もな切り返しにぐうの音も出ない。

眉間に皺を寄せて腕を組んだケロロと冷や汗を流すギロロという普段とは逆の立場になった二人をニヤニヤして見ていたクルルだったが、飽きたのか口を挟んできた。

「だったら聞くけどよ、隊長ォ」
「なぁに?手短にね」

手強い相手だがギロロよりは頭の切り替えが柔軟で干渉を好まないクルルならば分かってくれるだろうと幾分優しい口調で答える。

しかし意外にも真剣な眼差しで寄越された台詞はケロロを呆けさせるものだった。

「俺とオッサン、どっちが良い訳?」
「……んぁ?」

意味を理解しようと一拍置いて、隣で固まっていた幼なじみが露骨に慌て出す。

「クルル貴様ッ!何を急に「アンタは黙ってろっつーの」

ぐるりと体の向きを変えて気に食わない恋敵相手に渾身の笑みを見せ付ける。
あからさまに怒りを滲ませていくギロロの表情を楽しみながらクルルは言葉を選んだ。

「良い加減さァ、隊長のお願い以外に無駄な体力使いたくないんスよね〜。だりィし」
「…フン。確かに一理あるな。俺も同胞の額に風穴を空けたくはない」

怪しく光る眼鏡とつり上がった双眼の間で見えない火花がバチバチと散る。
まさに一触即発という雰囲気に命の危険を感じたケロロは一人見当違いなことに焦りを感じていた。

ここで暴れられたら我輩のコレクション達がヤバい、と。

「あの、言ってる意味が分かんないんだけどさー…、我輩って関係ないよね?だったら続きはぜひ鍛錬ルームで…」
「クク、ジョーダンだろ。俺達の運命は隊長の手の中だぜェ?」

何が楽しいのか目を細めて笑うクルル。
ギロロはやけに緊張した様子でケロロを睨み付けていた。

「さぁ、選べ。ケロロ」
「ゲロ?」

とにかく自分が答えればこの騒動は終わるらしい、とだけ理解したケロロは考えた。
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