頂き物 / 捧げ物
□ひなまつり?嫌がらせの間違いでしょ!
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「明輝、あのお願いがあるんですけど…」
珍しく琉夏が僕に何かを頼みたいといっている。頼みごとはいいんだけど…君の後ろの人が名前の通り鬼と化して僕を睨んでるけど!
「やっぱり…だめです、か?」
「いやだめ云々以前にさ、僕に拒否権ないよね?」
断るものなら、間違いなく氷付けにされる。そして琉夏はかるく首をかしげていることから、後ろの鬼に気づいてない。
ここで断って怪我したら、後で采葉たちに報告したとき爆笑されること請け合いで、さらにそれが詞恩に伝えられて心配されることも簡単に想像がつく。
「岬さんという人から、明輝に頼んで欲しいと言われたんですけど…」
「うっわ、逃げ道ふさがれちゃったよ」
「ならいいんだな?良かったなぁ琉夏」
「はい、雪華さん!」
一瞬その和やかな雰囲気に飲まれそうになったけど、すぐに僕は二人に聞いた。
「で、何して欲しいの?」
「お雛様になって欲しいんです!」
…お雛様=女の子=女装。すぐにその答えが浮かんできた。いくらなんでも、優しい琉夏がそんなことを言うはずはないだろう。僕は念のためもう一回言ってもらうことにした。
「ごめん……もう一回言って?」
「お雛様になって欲しいんです!明輝に」
聞き間違いではなかったらしい。出来れば聞き間違いのほうがよかった。この僕が女装とか。何の嫌がらせだ。
「この服なんですよ。作ったのは采葉さんと言うかたらしいです」
「後一緒についてたメモに、[メイクは薄く。目元重視で]って書いてあるぜ!」
「采羽のばかぁぁぁぁ!!」
楽しげに服を出してきた琉夏とメモをなぜか読む雪華。おそらくメモも采葉が書いたものだろう。僕は思いっきり叫んでいた。
この時点で僕に逃げ道はなく、どうせほかのメモに写真を送って来いと書かれているのだろう。