短編

□あいらいくゆー?
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好きには沢山あるらしい。

友達の好き。
家族の好き。
そして―――――

たった一人にあげる好き。




あいらいくゆー?




「HEY!ピカチュウ!」

今、まさに寝ようと目を閉じようとすると、聞き覚えのある声が邪魔をした。

また来た。はぁ。
内心溜息を付き、目を開ける。
思った通りの奴がいた。

この間、スマブラ屋敷に住んでから二度目のキャラ増員があった。
一度目で慣れたお陰か案外あっさりと、新しい仲間たちと友達になれたのだが。
たった一人だが苦手な者がいた。

「何で逃げるんだYO!」

そう。この英語混じりのハリネズミである。

「……何?ソニック」

体を起こすことも面倒なので、ほぼそのままの状態で呟き、この場を凌ぐことにした。
関わりたくない。
このハリネズミとは。

けれども、僕の気持ちなど露知らず、彼はムッとした表情を崩すと僕の腕を掴み、引っ張りあげる。
急な事に反応が遅れた僕は、勢いで彼の腕の中に飛び込んだ。

「なっ何するの!」

上目遣いで僕はキッと彼を睨む。
すると、彼は悪びる様子もせずに、乱闘しようぜとか俺と組むよなとか関係ない事ばかり言っている。

「……他の人と組みなよ」

「NO!ピカチュウと組みたい」

「僕は今は休みたいんだけど?」

つか、寝に来てるんだよ。

わざわざ誰もいない裏庭の木を寝床にしているのは、邪魔をされないためなのに。
このハリネズミときたら……。

いつまでたっても、諦める様子がなく結局、最終的には僕が折れた。

「…………勝手にすれば」

彼の腕を掴み、そっぽを向いた僕。
脱出する事も試みたが、無理だったため、それも諦めた。

いつもそうだ。
彼と関わると必ずと言っていい程、僕が折れる。
折れなければいい話なのだろが、それでは終わらないため仕方なく降参する。

他の人ならば、絶対に折れないのに。
どうして、このハリネズミには勝てないのだろうか。

ふと、上を見上げると満足げに僕を抱きしめる彼がいた。
だが、視線に気付いたのかニコリと笑った。

「…………何でそんなご機嫌なの?」

「HUM…ピカチュウがいるからだ」

当たり前のように答える彼に思わず面を食らった。

心臓に悪い……。

どくどくと波打つ音が早くなったのが分かった。
そして同時に頬が熱くなる。
初めての体験に分からず目を泳がせていると、彼が謀ったように口にした。
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