メモ

□両片想い
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「ピカチュウ。お客さんが来てるわよ」

外で子供組と戯れていると、スマブラ屋敷の扉がゆっくりと開き、中からピーチ姫が出てきた。
突然の事に、子供組が驚き、ピカチュウを含めた全員が固まった。
にっこりと笑い内容を伝えるとピーチ姫は、そっと扉の前から退く。
すると、後ろから出てきたのは、よく知る二人組だった。

「ジュプトル!オオスバメ!」
「よっ!」
「久しぶり!ピカチュウ」

笑顔で二人の名を呼ぶとピカチュウは駆け寄った。
緑色の髪に口に加えた枝、茶髪で女顔。
何もかもが懐かしい。
ジュプトルと呼ばれた青年は、何処か雰囲気が俺様狐に似ている。対するオオスバメは、男の子らしいが可愛い見た目である。二人を初めて見たスマブラメンバーは、そう思った。

外じゃ寒いという事で話は中ですることにした。忘れてはいけない今は1月なのだ。
居間には外にいた子供組、元々いたマリオ組そして通り縋りの剣士組がいた。
その中心で会話をするのは、久しぶりの再会を果たした三人。

「そっかぁ。みんな元気そうでよかったよ」
「だけど、ピカチュウが行っちゃってから、俺やオニゴーリ達が大変でさ」
「あー…癖のある奴らばっかだもんね」

一通り話を聞き、納得したように頷くピカチュウに、オオスバメが困ったように付け足した。
その表情をみたピカチュウは、苦虫を噛んだような顔をして呟いたが、おまえもだろとツッコミをジュプトルにいれられてしまった。
それには流石に納得がいかないようで、ヘイガニよりはましと少し怒ったように返した。

「まあ、あいつはなぁ」
「癖あるでしょ?まっワカシャモが直してくれるかもしれないけど」
「ヘイガニいたら怒るよ」

けらけらと笑うピカチュウに同意するように軽く頷くジュプトルだが、オオスバメは違うよで苦笑いを浮かべた。
楽しそうに話す三人に、スマブラメンバーも嬉しそうに聞いていたが、そろそろ話に参加したいと思い、二人に質問を投げかけた。

「…ねぇ。ジュプトルさんにオオスバメさん」
「「んっ?」」
「そっちでのピカチュウしゃんってどうだったんでしゅか?」

ネスとプリンの突如の質問に顔を見合わせて考える二人。
後ろには、余計な事言うなとピカチュウが構えている。
だが、二人はそんなピカチュウを見つけると声を合わせて言った。

「「腹黒い」」
ぴしっと空気が氷つく音がした。
唯一、動いているのは爆弾発言した本人たちと言われたピカチュウだけ。
ムッとした顔で侵害だと反論しているが、二人は次々に向こうでのピカチュウの事を話す。

「後は…悪戯好き?」
「それは、オニゴーリの方が上」
「いや、サトシ至上主義者だろ」
「否定はしないけど…何かムカつく」

思い付く限り上げていく二人だが、どれも納得がいかないようで、その度にピカチュウはツッコミを入れた。
ってか、デメリットしか言ってないし。

「何で!デメリットなの!」
「えと…」
「サトシはデメリットじゃないだろ」
「でも、腹黒いとか性格最悪とか悪戯の度が過ぎるとか神出鬼没とか…「それは言ってない」」

両手を腰にあてて、頬を膨らましながら怒るピカチュウに目でみて分かる位慌てたオオスバメ。
二人の様子を見てフォローを急いで入れるジュプトルだったが、時既に遅し。
ピカチュウはすっかり拗ねていた。
いじいじと先程言われた事を思い出しながら、一つ一つ言葉にしていく。
が、違う所もあったようで、最終的には二人同時にツッコまれた。

「…メリットないの?ねぇ」

散々ボロくそに言われて落ち込み俯くピカチュウ。
彼の尻尾と耳は元気なく垂れている。
言った本人達でさえ、流石にまずいと思ったのか声をかけようとしたが、突如聞こえてきた声に役目を取られてしまった。

「おい!何落ち込んでやがる」
「……っ!?」

怒気を含んだような声に反射的に全員が声が聞こえる方向に向くと、そこには扉の背によっ掛かる俺様狐がいた。
視線が集中する中、そっと扉の前から離れると真っ直ぐとピカチュウの元に進み、彼の目の前で止まった。

「……ウルフ」

ピカチュウは、自分のパートナーでもあるその狼を見た。
何処か怒っているようで、眉間にシワがよっている。
その様子にそっと視線を反らそうとすると、ウルフは驚くべき行動をとった。

「ピカチュウ」
「なっ何?」

怯えているように見えるピカチュウの背中に手を伸ばすとウルフは、ゆっくりとした動きで彼を抱きしめた。
彼の突拍子もない行動に本日二度目、その場の空気が固まった。
一度目よりも強烈な事にスマブラメンバーだけでなく、ジュプトルとオオスバメも固まっている。

「…どうしたの?」

空気が固まっている中、ピカチュウは顔を赤くしながらウルフに問う。
すると、ウルフはそっと彼の耳元に近づくと何かを呟いた。
「なっ!?」

周囲には何も聞こえなかった。
そのため、ピカチュウが段々と顔を赤くしていく理由も分からなかった。
この時、一番驚いていたのは、彼の向こうでの仲間のジュプトルとオオスバメであった。

数分後、ウルフは、ピカチュウを連れて居間を出て行った。
自分のやった行動により、空気とピカチュウが固まってしまったことに多少はまずいと思ったための行動だったが。
更に、その行動が居間にいた奴らを混乱に導く事とは露しらず、ウルフは居間から出た後、部屋に戻った。

「おい!大丈夫か?」
「……うん」

放心状態に陥っているピカチュウを布団の上に上がらせ、ウルフはその隣に座った。
相変わらず赤みが取れないのか、終始頬を手で触り溜息を付いている。
ウルフには何だかその姿が愛らしく見えた。

「…ウルフ」
「何だ?」
「……ぁ、ありがとう」

ズボンの裾を掴み俯くピカチュウは、恥ずかしげにそう呟いた。

「別に…てめぇらしくないと思っただけだ」

それだけだからなと言ったウルフは、不意に視線をピカチュウから、そらした。
二人しかいない部屋はしんと静まり還った。
だが、空気はそれ程重い訳ではなかった。
暫く俯いていたピカチュウは、様子を伺うように顔を上げた。
ウルフは、それに気付かずまだ逆を見ていた。

「…ウルフ」
「……」
「ウールーフ!」
「……」
「ウルフっ!」
「何だ?」

何度も呼ばれる声に嫌気が差したのかウルフはやっと返事を返した。
相変わらず向きに逆だったが。

「出てきちゃったけど、よかったのかなぁ」
「はぁ?」
「だから、話してたのに出て来ちゃったでしょ」

まあ、僕は連れてかれただけだけど。
さっきまで赤くなっていたのが、嘘のように意地の悪い笑みを浮かべながらウルフを見た。
ウルフは舌打ちをした。
厄介なことになったとこの時やっと気づいたのだった。

「どうするの?」

ニヤニヤするピカチュウに苛っとしたが、顔には出さず彼を見た。
急に返ってきた視線に驚くピカチュウだったが、変な所で負けず嫌いなため、こちらも顔に出さないようにウルフをじっと見た。

「ほっとけ」
「えっ?」
「噂したいならさせとけばいいだろ」
まるで人事のように言い放つウルフにピカチュウは敢えて何も言わない事にした。
けれども、じゃああの行動は何?
胸につっかえてなかなか消えないさっきのウルフが気になった。
真剣な目、いつもより低い声。
どれも知らない彼だった。

急に静かなになったピカチュウを不思議に思ったのか今度はウルフから近づいた。
隣の彼の視線はいつの間にか下を向いていた。
ウルフは、俯いている彼を下から覗き込んだ。
すると、そこには何故か顔を赤くしている彼がいた。

「何赤くなってんだ?」
「ぁ、赤くなんかっ!?」

わたわたと慌てたピカチュウは、ふるふると横に首を振った。
否定をしているつもりなのだろうが、赤みは消える事はなかった。

「で、どうしたんだ?」
 

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