メモ

□鬼よりも閻魔様よりも
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「ピカチュウ。ちょっと」
「んっ?」

子供は風の子に従い、こんな寒い日にも関わらずネス達と外で鬼ごっこをしていると、屋敷の中から呼び声がかかった。

その声に吊られるようにぴたりと足を止めると、他の皆も気付いたのか僕に向かって駆け寄ってきた。

「今の声、リンクだよね?」
「うん。間違いないよ」

誰よりも早く側に来たネスと聞くと、屋敷の方を見た。
目はあまり良い方ではないけれど、こっちに向かって走ってくるリンクの姿を捉える事が出来た。

「ピカチュウ!助けてくれ!」

はっ?

これでもかという勢いで飛び付いてきたリンクに後ろに退くと、今度は訳の分からない事を言われた。

反応に困り思わず首を傾げると、誰かが僕の肩をそっと叩き言った。

「食料が大食いコンビに食べられて、ないんだって言ってみたいだよ」

後ろから聞こえてきた声に振り向くと、さこにいたのは、二人目のPSI使いリュカからだった。
彼はネスと同じMother出身。
故に読心術も使える。

普段はネスと違って人の心の中をそうは、読まないのだが、緊急事態だと思ったのだろう。
今回は自ら進んでやってくれた。
だが、正直彼の未来が不安だ。

これを機に腹黒野球少年ことネスが彼をあらゆる手を使って育てあげるであろう。
腹黒へと。

まあ、それはさておきリュカのお陰で事態の深刻さを知った僕はリンクに向き直った。

「リンク……食料はもうないの?」
「……はい」
「冷蔵庫にも?」
「……これっぽちもありません」

終始肩を震わせて何故か敬語で答えてくるリンクを不思議に思ったが、それよりもやることが出来た。
僕はこの屋外に響き渡る声で皆に言った。

「二人を探しにいこっか」

出来る限りの笑顔で告げると、皆は先程のリンクのようになっていた。
よく見ると顔色も悪い。
流行りのインフルエンザだろうか。
事が終わったらドクターに頼むか。

そう思った僕は足を翻して屋敷に戻る事にした。
もちろん、問題を片付けるために。
屋敷に戻る間、誰一人と話さなかったが、気になんてとめなかった。
僕のやることはただ一つなのだから。

そんな風に怒りに燃えていた僕は知る良しもなかった。

この屋敷で逆らってはいけないランキング第一位に見事に輝いていたことを。


屋敷についた僕達はリンクの言葉に従い、リビングに向かっていた。
歩き始めて5分、本当ならもっとかかる筈の廊下をたったそれだけで突破した僕達は目的地に無事に到着した。
ドアノブを持ち、ゆっくりと開けるとそこには、マリオ組、星狐組、リンクを抜かした剣士組、カービィ組、そして残りのポケモン組もいた。

突如開いたドアに驚く彼等を見ながら、僕は迷うことなく奴らのもとに歩いた。

「ヨッシー……カービィ……」
「「はっはい!」」

呟くように名前を言うと、彼等はびしっと真っすぐ立った。
まるで棒のような立ち方に僕はクスリと笑った。

「リンクから聞いたんだけど……食料食べたってホント?」
「「ほっほんとですっ!」」
「冷蔵庫の中も?」
「「……はぃ」」
「ふーん」

双子でもないのに綺麗にハモるヨッシーとカービィ。
それほど恐ろしいのだろうと僕は他人事のように思った。

そんな二人を見ると僕は皆曰く、何処から出したのか分からない小さな手帳とペンを手に持ち言った。

「じゃあ…何食べたか言って」
「えっ?」
「あ、あの…何でですかっ?」

僕の言葉の意味が分からないのだろう。
彼等は、顔を見合わせ後、僕を見た。
その額には大量の汗が見えたが、気にする事なく続ける事にした。

「いいから言え」
「「はっはぃぃいい!!」」

恐怖のあまり裏声になる二人だったが、僕は視線に入れる事もなく、手に持っていた手帳をそっと開いた。
中には…今月やら先月等書いてある。

実はこれは、この屋敷の家計簿なのである。
王族育ちで何も分からない姫組。
王族でもないのに分からない髭組。
食べることにしか脳のない奴ら。
いつも一人の筈なのに、何も出来ない奴ら。
チームでも同じ。
それから子供達。

そんなメンバーがこの屋敷にはいる。
よって、家計簿なんて殆どの奴が付けれる筈もなく、色々あった末に僕が成り行きで付ける事となった。
 

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