メモ

□スウィートキス
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普段、一緒にいても

全てを知れてる訳

じゃないんだと思った。


「スバ子!お願いっ料理教えて!!」

朝目が覚めると、俺の視界に黄色が入ってきた。
いつもなら、まだ起きてない彼に内心驚く。
時刻は7時。今頃、タケシがご飯を作っているだろう。
もう少ししたら、ポケモン組で一番の早起きのコータスが起きてくる。
俺自身、遅くはないけど、早くもない。

有名な皇帝組は揃って低気圧。
おバカ代表組はなかなか起きない。
ちなみに彼はバカ代表。
こんなメンバーなため朝食はいつも遅れる。

それなのに、今日はコータスが起きるよりも早めに起きてる彼。
眠れなかった訳ではないと思うが。

「ピカチュウ。えと、料理?」
「ぅん……教えてっ」

しおらしい態度で俺を見上げるピカチュウ。
忘れてたが、彼は一番背が低い。
よって、上目遣いとなる。

「何作りたいの?」
「…………ょこっ……ちょこれーと」

俯き言葉を濁す。
その際に俺は一つの事に気付いた。
ピカチュウの耳が赤い。
うっすらと染まっている。

「チョコレート?…………あぁ、バレンタイン近いから?」
「……っ!?」

図星のようだ。
ただでさえ小さなな体を丸める。
よっぽど、恥ずかしいのか顔はけして上げない。
サトシにゲットされたあの日から、ずっと彼とともにいたけど、こんな彼を見るのは初めてだ。

「サトシにあげるの?」
「…………」
「別の人?」
「なっ!?……ちがっ」

俺の言葉に反応して顔を上げるピカチュウ。
どうやら、後者のようだ。
真っ赤になって否定を続ける。
らしくないな、なんて思うけど、そんな彼が可愛く見えた。

にしても、前者に反応しない事には驚きを隠せない。
あのサトシ命のピカチュウがだ。
バレンタインにチョコをあげないなんて。
今だに寝てる他のメンバーが聞いたら、きっと、大きな騒ぎとかす気がする。
それほど、有り得ない事だから。

「じゃあ、朝食終わったら作る?」
「えっ!いいの?」
「勿論、皆には内緒で」

人差し指を口に当てていうと、ピカチュウは嬉しそうにはしゃいだ。
花が咲いたような笑顔。
無邪気な彼はなかなか見れない。

今日はまだ始まったばかりだけど、何だか忘れられない一日になりそうだと、俺は思った。
 

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