メモ

□弟みたいな後輩
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「サンダーさん!」

いつものようにサボリ魔三人組を探していると後方から可愛らしい声がした。

「どこ行くんですか?」

さっと振り返ると何かを期待しているようなキラキラした目が見える。

「あぁ。ユクシー達がまた逃げてな。今探してる所なんだ」

ため息混じりに伝えると彼はそうなんですかと苦笑いを浮かべた。

「大変ですね」
「全くだな。あいつらには、ほとほと困るよ」
「でも、逃げたい気持ちは分かりますよ?」

あははと笑い、ユクシー達に共感を持つ彼に俺は軽く彼の頭を叩いた。
何するんですかっ!と頬を膨らませて怒る彼を見てこの場にいない例の緑の皇帝に同情する。

「いったぁ。酷い…サンダーさん。皇帝様みたい」

頭を抑え涙目で睨んでくる彼。
背のせいで自然と上目遣いになる。

「お前なぁ。いい加減に「こんな所でさぼってのか?ピカチュウ」」

そんな彼に注意をしようと声を口に出すと、これまた聞き覚えのある声が俺の言葉を遮った。

いつの間にか俺達の真後ろにいた緑の皇帝様である。

怒気を含んだその声を耳に入れ、ふと目の前の彼を見ると、さぁと血の気が引いたように青白い顔をしていた。

「あははっ……ジュカイン。早かったね。話し合い終わったんだ」
「まあな。大した事話してないからな。それより、ピカチュウ。お前、取材は?」

ずずいという効果音がぴったりのように彼に迫るジュカイン。
一方、彼は渇いた笑いをしながら、顔を背けジュカインを視界にいれないようにしている。
その際、緑の皇帝様は終始笑顔だ。

「しゅっ取材ねっ!えーと……」
「まさか、終わってない?」
「ち、違うよ…っ!取材受けるエンティさんが今日、忙しくて時間とれないから明日になったの!」

皇帝様の笑顔の効果は、どうやら効果ばつぐんらしく彼は大量に汗をかきながら、やっとこさ皇帝様に目を向け応えた。
その光景は第三者と化してしまっている俺から見ても恐怖でしかない。

―大丈夫なのか…。この生徒会長で。

俺は既にこの中学は卒業して隣の高校に通ってる訳だが、たまに上の交流、つまり生徒会組等の会議のためにこうやって中学にお邪魔する事がある。
その度に可愛い後輩(ピカチュウ)に会いに行くのも忘れない。
無論、スイクンやバカ二人(パルキアとディアルガ)等に自慢するために。
そうやって、中学を訪問するうちに例の氷と緑の皇帝様ズや姫とかの存在は知っていた。
全ては可愛い後輩(二回目)のために。

だが、こうやってこの二人を見ていると……軽くヤキモチを妬きたくなる訳で。

「大体お前は部長だろうが!サボるなっ!」
「取材はやってるし、文化祭にも展示したからいいじゃないの!ジュカインは堅すぎ」
「お前は緩み過ぎだ!!」

かれこれ20分は経過してるであろう。
二人の言い争い。
相変わらずどちらも引き下がらない。
もう睨み合いに発展している。
ちなみに此処は廊下な訳で、通り過ぎる人達も呆れた顔をしている。

これはそろそろ止めた方がいいだろう。
そう考えた俺は一つの案が頭に過ぎり、ニヤリと心の中で笑った。

「違うもんっ!僕は息抜きしてるだけだもん!」
「何処が息抜きだ!」
「何処って、「ピカチュウ」…ん?何?サンダーさ……」

何処までも続きそうな言い争いにピリオドを打とうと彼の言葉を遮り、その頬にキスを落とした。

「なっ……!?」

かぁと段々と赤みの増してくる頬に右手を充てて目を泳がせる彼。
何が起きたのか分からず頭がパニックに陥っているだろう。
まあ、それは一部始終を見ていた…いや見さしたと言っても過言ではないジュカインも当たり前の如く固まっている。

「プッ。ピカチュウ、それじゃあ、俺はもういくからな。」

今だに停止している彼の頭をポンと叩き、告げるとコクンと一つ頷いた。
顔はまだ赤かったが、怒ってはないらしく小さな声でうんと言っているのが聞こえる。

その様子に思わず頬が緩んだ。

「ジュカインもまたな」
「あ、はい」

彼から横に視線を移し上の空になっているジュカインに言うと、まだ頭が働いてないのか心此処にあらずといったように抜けた返事が返ってくる。


それを確認し、俺は動かなくなってしまった二人を残しその場を後にした。



 

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