予備

□切ない願い
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侵略兵器を作り終え、隊長ルームに向かおうと、モニターをチェックすると部屋の主がいない事に気付く。
近くの時計で時刻を確認すると、もうすぐ夕刻だ。

もしかしたら、ガンプラでも買いに行ってるかもしれない。
そう考えたクルルは、ラボでこのまま待とうとしたが、頭が導いた答えより先に何故か体がラボを出ていた。

――チッ、らしくネェ。

心の中で静かに悪態を付く。
日向家からフライングソーサーに乗り、外に出ると雨が降っていた。
アンチバリアを張り、辺りを探す。
彼がよく通っているホビーショップ。
幼なじみの556の所。
だが、考えつく所をひとしきり見ても、クルルの探し人は何処にもいなかった。

――何処行ったんだ? 隊長

流石に此処まで探してもいないのなら、仕方がない。
諦めて帰ろうと、日向家への道を辿り始めたその時。

――あっ!

「……っく」

いた―――
以前、ドロロの侵略作戦で花の種を植えた公園のベンチにケロロはいた。
空は赤く染まっていて、時刻は夕暮れを告げていた。
公園にはケロロ以外の姿は見えない。
視線を地面に落とし、必死で何かに耐えるケロロにクルルはそっと近寄る。
「隊長っ!」
「…っ!?」
こぽぽぽという独特な音を発てるフライングソーサー。
それでケロロの前に立つと、音とクルルの声に気付いたのか、ケロロはビクリと体を震わせた。

「…隊長」
「クルル?」
「そうっスヨ?」

いつもより落ちた声のケロロに優しく返事を返すクルル。

「ねぇ、クルル」
「…何スか?」
雨、止まないネ?
呟くように絞り出された言葉に、クルルは
「隊長、…雨なら、とっくに」
「…止まないネ?」
止んでると言おうとしたクルルの言葉に乗せるように発せられたケロロの言葉。
悲しみを含む声に、たいきれず壊れものを扱うようにケロロを抱きしめると、クルルは同意するように呟く。

「…あぁ、止みませんネ」

――空はとっくに泣き止んだのに、あんたの雨はまだ止まない



END
 

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