置場

□溶けることのないコトバ
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嫌いかと聞かれれば即座に否定出来る自信はある。
だが、好きかと聞かれたら…。
戸惑いを持ってしまった事をお許し下さい。

「ケロロ軍曹…貴方は宇宙デコポンのように甘い香りが致します」
躊躇なく賛辞を述べられ、その意味を理解する前に手を握られる。
その手にはニッパーがある。
「バ、バリリ准尉殿ッ…!?」
真面目な眼差しで見つめられケロロは、頬が熱くなるのを感じた。
物凄く苦しい…。
何故かは分からないが息苦しさに目眩がする。
情熱的で優しい。
素晴らしいお方だと思う。
第三者として幼なじみの女の子を彼が口説いていた時。
一途でいい人なのだし、付き合うくらいはいいのではないかとケロロは人事のように思っていた。
実際、他人事だった。
けれども、同じ隊長として見捨てるなんて真似は出来る筈もなく。
(まあ、結局は556が相談にノル形になったんでありますが…)
不可抗力とは言え、ケロロは相談に乗ると言っておきながら、それを出来なかったのだ。
それなのに、バリリは少しも気にすることなく、二回目に地球を訪れプルルに本格的にその後フラれた後。
こうして、ケロロの部屋――軍曹ルームを人知れず訪れるのだ。
「そして、とれたてのグレープフルーツのように美しい」
美しい…あまり嬉しくない言葉だ。
だが、バリリは至って真剣そのものである。
愛を囁くケロロの後ろに作りかけのガンプラが散乱していようが。
彼の瞳に映るのは麗しの緑だけなのだ。
(…バリリ准尉殿)
麗しの緑は自分の眼(まなこ)に映るそれを見る。
トクンと弾む鼓動を知りながら困ったように眉間を寄せる。
「…美しいはあまり嬉しくはないであります」
「では、木苺のように可愛らしいはどうでしょうか?」
負けずに挑む?バリリには感嘆の声を漏らすが、可愛らしいと言われて喜ぶヤツが果しているのか。
愛らしいお嬢さんならまだしも、自分はアンゴル族の女の子にオジサマと言われる年齢と性別。
嬉しいはずがない。
「可愛らしいも嬉しくはないであります」
素直に告げると今度は先程のケロロ以上に困った顔をする。
そんなあからさまの表情を見て、胸中でくすりと笑った。

(ねぇ?バリリ准尉。そんなに我輩が好きなら)
(貴方のコトバで我輩をおとしてみてよ?)
(そしたら…我輩もあるいは、ね?)



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