置場

□嫌いになってよ
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影が薄いとか気付かなかったとか当たり前に口にしてきたけど、本当は全部が全部、真実って訳じゃない。
昔の自分は今より無謀で子供過ぎた。
沢山傷付けた、知らないふりをした。
でも本当は分かってた。
君の中心があの日から変わらないことを。
「…ドロロ」
「ケロロくん」
ほぼ毎日会ってる筈なのに、こんな事考えていたからかな、何だか今すぐ泣きたいんだ。
手に持っていた作りかけのガンプラを置き、静かに部屋を訪れたドロロに抱き着く。
「ケ、ケロロくんッ?!」
目に見えて驚愕する彼を放置し、軽く力を込めれば一筋の涙が頬を伝った。
「…ねぇ、オマエなんでまだ"ココ"にいるの?」
「…"居ちゃ"ダメなの?」
微妙なニュアンスで返されて何だかいらつく。気付かれないと思って呟いたも同然だったのに何で気付くのか。
いつも並の空気読めなさを出してよ。
でなきゃ…。
「…居ちゃダメなんて言ってないよ」
強く言えない自分が嫌い。
「じゃあ…なんなの?」
優しい君が嫌い。
「…なんでもない」
伝えられない自分はもっと嫌い。
嫌いなんだよ、分かって。
「分かりたくないよ。そんなこと」
「え…ッ」
「ねぇ、ケロロくん。僕は君が大好きだよ」
為すがままに抱きしめられていたドロロがゆっくりと背中に両腕を回してくる。
優しく、壊れもののように丁寧に扱ってくる。
「…我輩はキライ」
「でも、僕は好きだよ」
「だいっきらい」
叫ぶつもりだったのにこぼれ落ちた涙のせいで、ちゃんと声にならなかった。
それなのに、ドロロには確実の伝わったのか囁くような返しをされた。
「僕は君が大好きだよ」
"うそつき"
最後の言葉は音にはしなかった。


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