置場

□君は残酷なまでに優しい
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くらりと目眩がして視界が揺れる。
身体中の熱が忙しく駆け巡り我輩を追い込んでいく。
「…ケロロ」
甘くて切ない声が響く、反響する。
脳内に深く根付いてきて解放してくれない。
「かわいい…俺のケロロ」
酔ってるのか疑いたくなる。
それほどに優しくて、やさしくて。
「ぎろろ」
既に酔いが回り始めてるせいか舌が上手く回らない。一滴も呑んでない癖に我輩よりも赤く蒸気した顔が目の前にある。空気に酔ったの?それとも我輩に?気恥ずかしい考えが浮かび顔を背ける。
「お前は俺のだ。そうだろ?」
コクりと反射的に頷いたのは、きっと酷い酔いのせいだ。じゃなきゃ、こんなに軽く返事なんか返さない。
「ケロロ…好きだ」
麻薬よりも効きそうな表情で、声で、雰囲気で、次第にのまれていく。強く抱き寄せられて、唇を奪われて。酸素の存在を忘れそうになるほど、我輩はお前に溺れてしまったみたいだ。
「…ん…んぅ」
紳士みたいなそぶりで歯茎を舐められて、するりと舌を搦め捕られて。
(ねぇ?オマエも我輩にハマってるって思っていいの?)
そんなのは幻想だ、きっと。明日になればこんなにも酔い潰れた今日も忘れてる。二人だけで呑むために準備した高いお酒の味も、散らばる空き瓶も、時が経てば忘れてしまうんでしょう。
(だって…オマエが好きなのは我輩じゃないもんね)

君はこんなにも残酷に優しいのに

(それも幻想【ゆめ】でしかないの?)


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