□ずるい人
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「千石さん」
「何?」

「それ、俺のなんですけど」



『ずるい人』



「知ってるよ。だって日吉クンの匂いがするもん」


そう言って羽織っているジャージの匂いを嗅ぐ


「変態みたいなのでやめてください」
「うわ、ヒドイ」


アハハ
と笑うと羽織っていたジャージを渡す代わりにに抱きついてくる


「ちょっ・・・千石さん!」
「日吉の匂い嗅いでたら本物に抱きつきたくなって」


今日は許して

といつもの笑顔

いつも通り、負ける



「日吉の腕の中が世界で一番落ち着く」
「あんまり落ち着かれたくはないですね」


自分より微妙に背の低い千石の頭は
肩に埋められている


「日吉クンはなかなかに連れないねぇ・・・」


ため息混じりの声
その声に「すみませんね」
とつっけんどんな返事をする


それが精一杯の抵抗



「ま、だからこそ落とし甲斐があるってもんだけど」


それでもその笑顔を向けられると


(あぁ、まただ)


俺はとっくにアンタに落とされてる


(本当に)


ずるい人







 

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