□口には出さない
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「…好きです!」



『口には出さない』



固まったのは言うまでも無い


「…は?」
「だから、好きです!って」



状況がよくわからない、と思っていると
「あー!鈍感!」
と悩む切原



「誰が誰を好きだ、と?」
「俺が、お前を好きなの」



そこまで聞いて、頭の中でやっと合点がいく
と同時にやってきたのは

おとこ同士できもいな、
とか
なんでお前が、

とかの疑問よりも



(…何とも言えない)



「それで?」
「それでって…付き合ってください!」



切原を見る限り、冗談を言っているようには見えない



「本気か?」
「あったりまえだろ!俺が日吉に冗談でこんなこと言うかよ」
「…そうか」



どう答えるか、困ったものだ

そう思って悩んでいると



「日吉、もしかして真剣に考えてくれてる?」



何を言い出すのか
というか、好きだと言ったのはそっちだろう

そう言いたげな俺を見て、切原が
「俺もっとすごい反応されるかと思ってた」
と零す



「なんだ、もっとすごい反応って」
「例えば、お前馬鹿か、とか。熱でもあるんじゃないか、とか」



あぁ、と頷く俺に切原が
「なんで?」
と聞く



「なんでそういう反応しなかったの?」
「なんでって・・・・」



特に不快に感じなかったからだ
むしろ・・・



「…別に」
「なんだよ別にって」
「理由はない」




言ったら調子に乗せそうで



(好きだと言われてちょっとでも嬉しかったなんて言ったらコイツは)



「考えとけよな!」



そう言って笑う君が不覚にも



(絶対口には出してやらない)







 

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