□雪と、君と、
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今日初めて雪が降った

君は隣で寒いですね、とか言ってて

恋人に寒い、なんて言われたら黙っておけない俺は
君の手を取る



「…っ滝さん!」



すぐに、君の諌める声



「道端では駄目だって…」
「だって日吉が寒いとか言うから」
「でも!」
「いいでしょ?今日は雪が降ったから特別だよ」



そう言って笑って見せれば君は反撃できない

君のことは俺が一番よく知ってる



(自惚れかもしれないけど)



「…素敵だね」
「雪が…ですか?」



「汚いものを全部覆ってくれる」



日吉は首をかしげる



「そうですかね」
「少なくとも俺の中ではね」



またも首をかしげる日吉



少し考えて、口を開く



「そう、かもしれません」
「…なんで?」
「なんでって…」



あなたが言ったんでしょう、というニュアンスを含みながら日吉は答える



「こういう景色は、一瞬でも心を奪われるからじゃないですか?だから何にも見えなくなるんですよ」
「あはは、日吉らしい答え」



滝さんは、
そう言いかける日吉を遮って
握っている手を引っ張った
次の瞬間
君はもう俺の腕の中



「…っ滝さん!」



本日二度目の君の怒った声


「ごめんごめん。つい日吉が可愛くて」
「だから、そういう恥ずかしいことは普通に言わないで下さいよ!」



それでも何だかんだ腕の中で大人しくしてるから
日吉はこういうとこが可愛いんだな
とか考えて



(本当に愛しくて仕方ない)


狂いそうなくらい



「日吉」
「はい?」
「ずっと俺の傍にいてね」





(滝さん、)
(何?)
(それ、俺のセリフです)
(あはははは)










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