財前ドキサバ

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(財前side)


れいなをロッジまで送った帰り、焚き火の前に部長が座っているのが見えた。何やら真剣に考え事をしているみたいや。声かけてええんか迷った挙げ句、まあええか、と部長に近づく。俺には、どうしても気になっていることがあった。


「部長」

「…なんや、財前から話しかけてくるなんて珍しいやん」

「聞きたいことがあるんですけど」

「ええよ。なんや?」


部長が自分の隣をトントンと指差す。遠慮なく座らせてもろて、気になっていた質問を投げ掛けた。


「部長がいつもより強引なかんじがしたんですわ」

「強引?」

「せや。明日の探索の話なんですけど、部長はれいなを連れていきたがってた感じがしました。いつもなら『危ないから待っといて』とか言いそうやのに。何でなんやろって」


正直、あいつがいなくても俺ら4人だけで探索は出来ると思う。いや、むしろ男だけで行った方がええような気がする。廃病院っちゅー聞くだけであやしいところに、無駄に優しい部長がれいなを連れていこうとするのが、俺には理解できなかった。


「あんな、これはあくまでも俺の推測やけど」

「はい」

「きっと、みんなで探索するのは明日で最後になるで」


明日で、最後?


「どういうことッスか?」

「今日の様子を見る限り、手塚クンと跡部クンは俺らの知らない何かを知っている。2人は共犯や。もしかしたら、この遭難は最初から仕組まれていたのかもしれへん」

「仕組まれてたって…。あの2人が仕組んだっちゅーことですか?」

「そうや、何らかの理由でな。よくよく考えてみれば、この島おかしいやろ。こんな大人数が寝泊まりできるだけのロッジがあって、食料にも特に困らへんし、なんとかテニスも出来る。無人島にしては、安全に手入れされとる気ぃせえへん?」

「まあ…言われてみればそうッスね」

「手塚クンと跡部クンが近づくなって話してた、あの廃病院に秘密が隠されてると思うねん。せやから明日の探索で何かが見つかれば、無人島生活とはおさらば出来るかもしれへんと思ってな」


おさらば、か。まあ本来は全国大会を前に必死にテニスの練習しとる時期やからな。こんな生活、はやくおさらばした方がええに決まっとる。せやけど、なんだか素直に喜べへん。何がひっかかっとるのか…。喉まで出掛けたけど、必死に飲み込んだ。なんやこれ、調子狂うわ。


「…部長の考えとることは、よお分かりました。せやけど、それとれいな連れてくのとは何か関係あるんスか?」

「……はぁ!?財前、本気で言うてるん?」

「いたって本気ですわ」


嘘。ほんまは部長の言いたいこと、分かっとる。『れいなと探索できるチャンスは、これが最後』てことやろ?おせっかいな部長の考えそうなことや。せやけど知らん振りをするのは、俺の中の葛藤を悟られたくなかったから。俺のなかで完結するまでは、むやみに口に出さへん。


「…ほうか。まあ、そういうことにしといたるわ。それじゃ、俺からも1つ質問」

「はい、どーぞ」

「財前はこのまま日向さんと別れてええの?」

「…何が言いたいんスか?」

「この生活が終わったら、日向さんとはもう会えないんやで?しっかりけじめつけや。ま、その様子やとまだ悩んでるんやろうけど」

「…余計なお世話ッスわ」


クスクスと笑う部長に腹がたって軽く睨み付けるも、全く気にしてへんのか『男見せろや』と背中を叩かれた。くそ、無駄に男前でますます腹たつ。


「さっきの話し合いで『部長やなくて、俺が護ったるわ』くらい言ってあげればよかったんに」

「からかうのはやめといてください」


あー、ほんともう。れいなが絡むと調子狂う。こんなの、いつもの俺やない。





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