Book3
□crackersA
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授業がない日のこと。リノアは朝からスコールの部屋を訪ねたが、予想通りと言うかなんというか不在であった。まったくいつ休みをとっているのだろう?リノアはしんとした扉の前でため息をつく。
セルフィやアーヴァインなんかはたびたび一緒に出かける姿を目撃しており、ちょくちょく遠出のおみやげをもらったりしている。彼らなりに休息を取っているのであろう。だがスコールはどうか。司令官という立場もあろうが、自分から進んで休みを取らなさそうなイメージだ。
「会いたいのにな…もうなんか限界だよ」
リノアはこつんと額を扉に押し付ける。この前のハグだけでは全然足りなかった。確かに彼の香りを、力強い腕の力を感じたことはとても嬉しかった。そしてそうすることはとっても特別なことなんだって実感できた。わたしにしかやらない、ってこともわかってる。だがどうも彼より自分の気持ちが強すぎて、というか彼の反応があまりにも淡泊過ぎて少し寂しかったのだ。
まるで出会ったころのよう。アクションは違うけど、でも気持ちに距離が出来てしまったみたい。
「でも会いたいから…しょうがないよね」
今がチャンスかもしれない。だってセルフィも仕事に余裕がでてきたと言っていたし。スコールも前よりも時間が出来ているだろう。それにもう気持ちが止められない。あるのは行動のみだ。リノアはばさっと頭をあげると廊下を素早く駆け抜けていった。