Book3
□MASQUERADE!D
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---8月23日pm.2100
その後SeeDの任務は滞りなく遂行された。無事ドール大公の就任式もとり行われ、夜の晩餐会の後、SeeDの任はようやく解かれることとなった。
…ここはドールホテル内のSeeD司令官スコール・レオンハートに宛がわれた部屋だ。
そこには今の部屋の主はいない。代わりに椅子には黒髪の少女が自分の膝を見つめたままスカートをぎゅっと握りしめ、鎮座していた。一言も言葉を発することもなく。
…ガチャ
とそこへ本来の主が帰ってくる。その人物は部屋の中にいた少女を一瞥すると表情を変えることなく後ろ手でドアを閉めた。
…バタン
そのドアの響きは大きくはないけれど怒りをにじませているように冷たく室内に響き渡る。黒髪の少女、リノアはその音にビクリと体を震わせ、それでも視線を変えることはなかった。とたんに手のひらから汗がにじみ出てくるのを感じる。
入ってきた青年は彼女の傍を通り過ぎ、着ていたSeeD服を乱暴に脱ぐ。そしてバサッと近くのソファにそれをかけたと思うとゆったりとした足取りで彼女の前まで着た。
リノアは自分に影が出来たことに気付き、徐に顔を上げる。そこには正真正銘怒りをあらわにした彼…スコールの姿があった。
いつもの無表情さに加わり、ひどく鋭利な眼光。そして腕組みしながら全身で放つ殺伐としたオーラ。