precious…

□『絆』(ゆきさまより)
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近頃SeeD司令官であるスコールに、何かと質問を浴びせていく男子生徒がいた。

スコールと言えば孤高という言葉がよく似合う、人を寄せ付けない雰囲気を持つことで広く知られていた。最近では幾分それが和らいだとはいえ、今でも気軽に話し掛けることができるのは魔女戦争時の仲間たちくらいなのだ。

それなのに、と教師という立場ゆえそんな場面によく遭遇するキスティスは、その光景を見かけるたびに首を捻っていた。
もちろんスコールを慕い、コミュニケーションを取ろうとする子がいるのは素敵なこと。だが頬を染めてスコールと話すその生徒の様子を伺うに、その質問内容は戦術に関わることではなさそうだったのだ。


「スコール、ちょっといいかしら」


丁度その男子生徒と別れた頃合いを見計らって、その場を離れようとするスコールの肩を捕まえてキスティスは笑みを向ける。
続けざまに呼び止められたスコールはというと、眉を潜めてから息を吐くとキスティスへと向き直った。


「今度はあんたか。何の用だ」

「うーん、こんな通路の真ん中じゃね。お茶でも飲みながら話しましょ」


そう言って食堂の方を指差してから颯爽と歩いていくキスティスを眺めて、スコールは一つ大きな溜息をついた。

あの男子生徒がスコールに話し掛ける姿をよく見かけるようになったのは、本当につい最近のことだった。ただその生徒が最近転校してきたとか、入学したばかりだとかそういうわけではなく、それこそスコール自身も候補生だった頃から籍を置いている者だったのだ。
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