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□a secret film番外編〜love letter〜@
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※ゼル、リノア、セルフィ、アーヴァインが高校生になっているパラレル連載です。ゼル主体でお話が進んでいます。ほのぼの系ですので、パスがないかたも気軽に読んでいただけると思います。ちなみにスコールとキスティスは設定が違うのでここには出てきません。ご了承くださいませ。



a secret film番外編〜love letter〜@




キーンコーンカーンコーン…


ようやく昼休みだ。物理の煩わしさから解放されたクラスメイト面々。窓際に座っていたセルフィはうーんと腕をのばし、軽く首を回して、教科書とノートを素早くしまう。ついでにかばんから弁当箱を取り出す。


「リノア〜屋上いこー!」

「うん、セルフィ」

後ろの席で同じく鞄から弁当箱と水筒をとりだしていたリノアは、笑顔で答える。2人は他愛ないおしゃべりを続けながら、教室を出て行こうとして…あることに気付いた。


「あれ、なにしてるん?ゼル」

後ろの席の一番廊下側にいるクラスメイトのゼルが、椅子に座ったままじっと机を見ている。いや、なにか封筒のようなものを凝視しているのだ。いつもならこの時間、すでに彼の姿はない。誰よりも早く、購買のパン奪い合いに参戦しているはずなのだから。


「あれ、ゼル?聞こえてるー?」

反応のない彼に対して、リノアは小首を傾げて大きめの声を出した。それにはっとしたように、彼、ゼル・ディンは大きく反応した。まるで深い眠りから急に覚めた感じだった。


「おわっ!おまえらいつのまに!」

「さっきからいたよ」

「ゼル、呼びかけてもな〜んにも反応しないんだもん。なんか変なものでも食べたん〜?」

「ばっ…!そんなんじゃねえよ!」

がたっと椅子から転がり落ちそうになるゼル。顔はゆでダコのようで、2人と視線を合わせようとしなかった。いつも落ち着きがない彼だが、今回は違ったかたちで落ち着きがないように思えた。そわそわして…いやおどおどしていると言っていいのかもしれない。そんな彼にリノアとセルフィはますます首を傾げる。ゼルはしきりになにかを隠そうとしていた。おそらく垣間見えた封筒であろう。萌黄色で清潔な印象を与えるそれだった。


「ね、さっきからじっと見てる、それなに?」

リノアはゼルの下敷きになっているであろうものを指さした。

「え?!」

「隠してもむだや。今あんたの腕のしたにあるやつや」

「そんなもんねぇよ!」

あたふたと答えるゼル。学ランを腕まくりしている下に確かにそれがほんの少し垣間見える。彼はその事態に気付いてないようだ。それに、セルフィはふーんと鼻をならし、そしてにやりと笑った。どうやらセルフィのゴシップ好きに火が付いたようだ。リノアは横目でそれを見ながら、げっと内心思う。でもゼルがなにを隠しているのか、リノアも心なしか知りたかった。


「もう、行けよ!俺のことはほっといてくれ!」

「それ言われたらますます気になっちゃうし」

「そやで〜あ!あんなところにやきそばパンが!」

「えっ?!」

あらぬ方向に指さし、セルフィは大声を出す。それにつられてゼルはぐるっと後ろを向いた。やきそばパンはこの学校の購買で一番人気だ。ゼルはいつもそれを狙っているのだった。そしていつも獲得できずにいるのであった…

「スキあり!」

セルフィは、ばっと手を伸ばす。ゼルの手を払い、下にあった封筒をつかんだ。


「や、やめろ!」

「チェック、チェック〜♪」


―…ゼルの必死の叫びも虚しく、その封は解かれた。セルフィはその中にあった手紙を読み始める。つられてリノアもそっと覗いた。

「…拝啓、ゼル・ディン様。突然こんな手紙を渡してしまって、すみません。なにを書いたらいいのかわからないので、単刀直入に言います。わたし…あなたが好きです。いつもあなたの姿を見ていました。クラブ活動で頑張る姿、本を読む姿、とても素敵です。それだけ伝えたくてこの手紙を書きました。もしよろしければお返事ください。いつでも待っています。

図書委員の…より…」


―…


かさっと紙が擦れる音が教室内に木霊した。読み終えたセルフィはすぐに色めきたった。


「な、なんや!ゼル、これラブレターやん!」

「えーゼルってばいつのまに!」

セルフィとリノアはぐぐっとゼルに詰め寄る。そのほか、事の成り行きを見守っていたクラスメイトも彼の周りに集まっていた。

「よかったなぁ〜これでおまえも彼女持ちかよ!」

「相手だれだ?!」

「いいなぁ〜ゼル、おまえだけは俺たちの仲間だと思ってたのによ!」


がやがやがやと一瞬にして教室の一角が騒がしくなる。そしてゼルはといえば、なんと頭を抱えて机に俯いたまま動かない。いつもなら大声をあげて、否定し、体をむちゃくちゃに動かして、野次馬など振り切りそうなものだが。これは大変なことをしてしまったとリノアはその様子を見て思った。

「みんな!」

リノアはとびきり大声を出す。今まで散々ゼルをからかっていた野次馬たちは驚き、しーんと静まりかえった。


「「リノア…?」」

「みんな、そんなにからかったらゼル、かわいそうだよ。ていうか時計見て」

ほらっと指さした壁掛け時計。昼休みがあと20分しか残っていないという表示がなされていた。

「やっべー、購買閉まる!」

「俺のパン〜!」

そう言って、生徒は一斉に教室を出て行き、あたりはまたしてもしーんと静まりかえった。他の生徒も、急いで自身の席につき、弁当を広げていた。ちらちらっとこちらの様子を窺いながら。

そしていつも通りの教室に戻る。ゼルはまだ机に突っ伏したままだ。リノアとセルフィは苦笑しながら顔を見合わせた。


「あの、ごめんね、ゼル」

「なに見てるか、気になったんや。出来心やねん〜ごめん!」

リノアとセルフィはすまなさそうにゼルの背中に声をかけた。そうしたらくぐもった声でゼルがなにか、つぶやいたのが聞こえた。

「え?なんて?」

リノアが耳を寄せて、慌てて聞き返す。そうしたらかすかな声でこう、聞こえた。

「俺、もうわけがわかんねぇよ…」

それはいつにもなく混乱し、気弱なゼルの姿だった。セルフィとリノアは目を見開いて、彼の背中を見つめた。



to be continued…
 

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