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□decision
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ドールの海岸線には現代建築の技をすべて注ぎこまれたような異様なホールがある。ガラス張りのシャープなライン、海風と調和されるように配合された色。テラスはカフェになっており、ホールを活用する関係者、来客者、一般市民の憩いの場になっている。

そんな場所において、ある重要な会議がひっそりと行われていた。その内容は「魔女の観察経過の報告と今後の処遇について」というものだった。


その会議を今しがた終えたスコールはSeeD服に身を包み、テラスを通り過ぎて海岸に突っ立っている。さわさわと生ぬるい風が彼の髪を靡いた。スコールは海を見るわけでもなく、空を見るわけでもなく、ただその方向を眺めていた。そして頭の中では吹く風と同じくらいの生ぬるい感覚で、先ほどの模様を思い出していた。


…始めにリノアの日々の行動について、報告がなされた。学園でどのようにすごしているか詳しく発表するのだ。病気の有無、エスタでの検査の結果、情緒不安定なところがないか、そして…オダインバンクルの異常がないか等々。それらはまるで虫の観察日記かなにかのようで、1人のSeeDによって淡々と述べられた。その声を聞きながら、スコールは目を伏せていた。


そして今度は意見交換である。報告を聞いた後、自称「魔女専門」と呼ばれるものたちが今後の彼女の身の振り方について意見を出し、まとめていく。本来なら大統領クラスが顔をそろえることになっているが、緊急時以外は代理として、各国の研究者が顔を連ねていた。

「なにもなければ、このままでいいのではないか。もう少し様子を見た方がいい」

「いや、このオダインバンクルの結果には少し疑問がある。エスタで長期にわたり、観察を行うべきではないのか。そもそもバラムとエスタでは距離が遠すぎる。やはりわたしは彼女にはエスタにいてもらうのが一番だと思うのだが」

「それもそうだ。それが一番安全なのだ。万全な設備のある中で保護しておくのがよくはなかろうか」

「いや、SeeDのもとのほうがいいだろう。彼らの実力はすでに証明済みだ。わたしはこのまま様子をみておくほうがいいのではないかと思うのだが」

「ではこのまま様子をみるということで。3ヶ月後の調査報告によって、エスタ移転の可能性を模索するということでよろしいですか」

「「「はい」」」


会議はあっけなく終わった。その内容はいつもと同じようにすすめられ、同じ意見にまとめられ、前回となんら変わらず、終わった。がたがたと席をたっていく参加者の中でスコールは苦々しい思いでゆっくりと席をたつ。今回も反発しそうになる衝動を抑えるので必死だったことにため息がでる。
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