Book2
□もしも…メンバーが動物だったらC
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―…スコールは夢を見ていた。
あの時、自分の唯一の肉親を見殺しにしてしまった瞬間の夢を。…自分の判断は正しかったのか、間違っていたのかは定かではない。
ただ後に残った虚無感と他の狼との距離感。これだけが強烈に自分の中を支配していたのは確実である。
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あれは雨が降る夜だった。スコールがいた群は縄張りをめぐって他の群と抗争が起こっていた。
スコールはその時まだ小さかった。必死に我が弟を守ろうとしたエルオーネ。だが庇いながら戦う彼女は他の群の狼から致命傷を負ってしまったのだ。
結局その戦いはスコールたちの群が勝利した。しかしエルオーネはすでに息も絶え絶えの状態だった。スコールは姉に駆け寄り、傷を必死に舐めながら助けを求めた。
「だれか来て!お姉ちゃんが!お姉ちゃんが!」
だが振り向いたスコールの目に写ったのは冷たい目をした仲間の姿だった。
「スコールほっとけ。もうエルオーネは長くない。」
当時のボスがスコールを見下ろす。
「…おねえちゃんを置いてはいけないよ」
スコールの嗚咽だけがその場に響く。
「自分の身は自分で守る。狼の掟だ。エルオーネはそれを守れなかった。だから置いていく。情けは無用だ。」