小噺
□捌
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散歩に行こうと歩いていたら穴があった。
穴はポッカリと口を開けボクを飲み込んだ。
落ちる堕ちる。
どこまででもボクは落ち続ける。
まるで底などないかのように。
もしくは丸く輪っかになって出口と入口が繋がってしまったのだろうか。
落ちる堕ちる。
どれぐらいの間落ちているのかわからなくなってきた頃、ボクはとうとう自分は穴なのだと気づいた。
だから底などあるわけはない。
穴であるボクはすぐに底をつくる。
ようやくこれで落ち着いた。
あとは、ここで待っていればいい。
底で小さく体育座りになってボクはほくそ笑んだ。
ボクの役目は落ちることではなく落とすことなのだから。
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