words(BOOK)

□あい
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あなたを想うとどうしてか、涙が出そうになる。でも出てこない。だから、くるしい。


あなたがいない時間を過ごす私はあなたといるときの私のぶんも物事を考えて、考え込んで、ひとりあたまのなかで様々な論争を繰り返し、いつも同じ結論が出る。

私はただあなたが好きなんだって。結局そうなんだって。それだけが分かればいいのって。何度も何度もそう思う。不安なときも満たされているときも、結論はやはりそこにしか行き着かないというのに。懲りもせず私はあれこれと想いを巡らせる。

そしていざあなたを前にする。

距離のない場所で、触れ合ったままで、口に出すことも出来ずにそれでも伝われ、と願いながら。

抱き締める。

こつんと額を合わせたままで口を開かずに言葉を送る。



『あんまり認めたくないけど、でも。アンタのことが何よりも大事だよ。
好きだよ、大好きなんだよ。ねぇ、聞こえてる?』


そして時々まるで私のその言葉に答えるみたいにキスをくれる。


言いたくて、言えなくて。くるしくて、胸が疼く。

言葉にしてしまえば早いことなのにね、いつも。





ああ、うん。


あなたが大切で、守りたい。

でもやり方が分からない。


ねぇ、あなたはあなたでいるそれだけで私にとってちゃんと意味がある。

私は私でいることにちゃんと意味がある?私には分からない。あなたにしか分からないこと。





必要とされたい 愛されたい 大事にしてもらいたい



『私は私がされたいことをあなたにしているだけなのかも』


でも、


『あなたがいなくなったらきっと私、本当の本当に泣いてしまう』






一度手に入れたもの、失うのは怖いことでしょう?だからね、だから。言葉にするのが怖いの。だって言葉にして本当にあなたに伝わってしまったら、あなたは私のものになってしまうし私はあなたのものになってしまう。「誰かのものになる」だなんてそんなのごめんだわって笑ってたあの頃。強かったんじゃない。知らなかっただけ。


ふたりでいるっていうこと。ただいるだけでも、そこに意味が生まれるっていうこと。責任を預け合うっていうこと。そりゃあそんなこと言ったって手を離すのは簡単なこと。辛いけれど、きっとあっという間のこと。でもね、今。きちんと繋がっていたいの。



言葉にしてしまえば、

私はあなたに対して何らかの責任を負う。逆だってそう。

でも、重くて温かいそれを私はそろそろ背負う覚悟を決めるよ。





「あのね、」

「ん?」

「好き」

「・・・知ってた」

「本当に?」

「半々かな。なかなか言わないからもしかして違うのかもとも思ってた」

「言いたくなかったから」

「何だソレ」

「でも、好きだよ」

「・・・あのな、」

「うん?」

「俺も」





胸の奥で疼いていたその場所に温かい塊が落ちた。

静かに、その場所に腰をおろした。

この熱が冷めてしまわないように。埃をかぶってしまったりしないように。

毎日きちんと隅まで磨いて、疲れたら少し休んで、ふたりで育てていこう。



あなたを想う夜、疼く胸。

いつまでも忘れないように。





背負っていくよ、色んなもの捨てられずに拾ってしまう私だけど。あなたのことだけは落とさずに歩いていくから。









END
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