words(BOOK)
□おうち呑み
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眠った君の指先にそっとマニキュアを塗ってみた
自分にするよりも丁寧に、慎重に
目が覚めた君の反応を楽しみにまたビールの缶を傾ける
すっかり温くなってしまったそれは特に美味しくもなかったけれど
狭い部屋の中
ひとつのテーブルの上
きみは両手を投げ出して
あたしは肘をついている
テレビではアナウンサーが今日の甲子園の結果を淡々と読み上げる
開けっ放した窓から夏の夜の温い風が入ってくる
扇風機がそれを掻き混ぜて君の髪を揺らす
悪くないこの瞬間
いい時間 は
計算せずともふっと訪れる
捕まえておくことの出来ない
気紛れなヤツ
目が覚めたら
君はどんな顔をするかな
END
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