words(BOOK)
□永遠
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伝えたいのはいつも、たったひとつの言葉です
たったひとつの想いです
言葉にすると零れ落ちていくように意味は失われてしまいます
まるで手のひらにすくった水のように
流れ出てしまいます
言いたいことはそんなことじゃないのに、いつも
間違ったことばかりがあなたに届いてしまいます
いっそ何も言わなければいいのかもしれないと思ってそうしてみると、今度は溜まった気持ちが胸の中でごうごうと渦を巻くばかりで一向に静まってくれません
ああなんて難しく面倒臭い生き物に生まれてしまったのでしょう
「嫌なところなら沢山知っているよ」
私は言いました。
「信じられないくらい小さなことで怒ったり、我侭で勝手で自分のことばかりで、嫌になることもあるの」
「うん。分かるよ」
「私の嫌なところも沢山、知ってるでしょう?」
「まあね」
「それでもまだ一緒にいるのね、私たち」
「そうだね」
「どうして?」
「どうしてだろうね」
「私はまだ、君と一緒にいてもいいよ」
「俺もまだ、あなたと一緒にいてもいい」
「いつになったら愛想が尽きるのかしらね」
「想像できないね」
遠まわしに、きっとずっと一緒にいるのだろうねってそういうことを伝えたくて確認したくて意地悪な言葉を使ってみたりする。ちゃんと伝わっているのか甚だ不安にもなるけれど。
ああまるで腐れ縁みたいに離れる予定の見えない私たち。
不完全な言葉を紡いでぶつかり合いながらもいつか、気がついたら2人でゴールテープを切っているような、そんな気がしてしまう。
永遠の真っ只中に居るような、そんな毎日の中で。
END
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