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□Thank you for...
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『俺、お前がいい。』


そんな風に言われたのは初めてだったから、

咄嗟に何も言葉を返せなかった。




《Thank you for...》




「アレーン!」


ぱたぱたと足音がして、ふわりとオレンジに包まれた。

柔らかい髪が視界を占領し、耳には心地よい澄んだ声が届く。


「おはよ。今日も愛してるさv」

「はいはい、どーも。」

「もー、アレン冷めすぎ。もっとこう初々しい反応とかさぁ」

「今更。毎日言われてたら慣れちゃって無理ですよ」


小さく微笑ったら、それもそうか、なんてラビも笑った。


ラビに告白されて、付き合いだして早一週間。

思い返してみれば、教団に来てからかなり僕は変わった気がする。

それまで大切だったのはマナとせいぜい師匠くらいで、他は特にどうでも良かった。

それが今は、はねた寝癖なんかを気にしてる自分がいて、正直少し戸惑っている。


「ん、どした?アレン」

「…え?あ、いえ」


ラビは今日も元気だな、とか、

睫毛長いなぁとか、
今日着てるの新しい服かな、とか。

そんな、今までほぼ無関心だった事に気を取られていたら、ラビに不思議そうに覗き込まれた。


「…別に、なんでもないですよ」

「そ?ならいいけど」


何かあったらなんでも相談しろよ?
にっこり笑って、ラビは駆けていった。

相変わらずラビは忙しそうで、けれど誰かといる時はそんなこと全く感じさせないくらい余裕で元気で。

ラビの笑顔に助けられているのはきっと僕だけじゃないだろう。

だから、ラビが僕を好きだといった時は信じられなかった。

(…そういえば、最初に言われたのいつだっけ。)


ほんの数日前なのにもう随分と昔のことのように感じる。

それくらいラビはそれから何度も言ってくれたし、何度も何度も抱きしめてくれた。

そう、最初は確か。
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