自己満足的文章

□暗黒への序曲
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―――ポロン―――



「・・・・。」
 どこか遠くの方で微かに、弦楽器の音が聞える。
 その音は、何処と無く懐かしい気持ちを沸き立たせた。
 でも、懐かしい気持ちになったのも束の間、すぐにその気持ちは苦痛へと変わっていく。



―――ポロン―――



 弦楽器の音は絶え間なく続く。
 まるで、何かを歌うように。



―――ポロン―――



 綺麗な音色。素敵な歌。
 こんなにも綺麗なのに。こんなにも素敵なのに。
 なのに、その音色、歌が一音一音耳に入ってくる度に頭痛が脳裏を駆け巡る。



―――やめろ・・・!―――



 叫んだ。
 音を聞きたくなくて、歌を聞きたくなくて。
 音を制したくて、音を止めたくて、叫んだ。
 

 ・・・・叫んだつもりだった。
 叫んだつもりだったのに。
 ありったけの力で叫んだはずなのに。
 自分の声の音は、少しも聞こえなかった。



―――声が・・・でない・・・・!?―――



 背に嫌な汗が伝う。
 その感触は、まるで蛇が背を這うようだ。
 それが気持ち悪くって自分の尾で背を叩く。
 ・・・叩いたつもりだった。



―――・・・そ・・・んな・・・―――



 尾が動かない。



―――ま・・・まさか、そんなはずはっ・・・!―――



 何故自分の尾が動かない。
 何故自分の声が出ない。
 試しに、と、自分の手と足を動かそうとする。
 だが、どちらとも、何かに押さえつけられているように、動かない。
 耳も動かしてみる。
 ・・・やはり、耳も動かない。
 首も動かしてみるが、これも一向に動かない。



―――何故だ、何故動かない!!・・・何故・・・・―――
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