collected poems

□ナイフ
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今宵の空はいつもと変わり無く 今日の記憶も消えかけて
真昼の情景は通常で この一夜が終われば紅へと

もう誰も愛してくれない …そう知って
私だけを愛してなんて …喘いで
孤独感と疎外感に渦巻く瞳

背後から いつもと変わらぬ様子で そっと
近寄り その背中を突き刺すことが 出来たなら
幾らか私は救われたのでしょうか?

同情する偽善者を裂いて 哀れな私を守りたい
窓の外の歓声も白い壁も この時間を過ぎれば紅へと

もう誰も構ってくれない …そう知って
私だけを見ていてなんて …思って
内なる狂気が渦巻く瞳だけが

潜ませた 冷たいナイフを握って そっと
貴方の その背中を突き刺すことが 出来たなら
この狂気でさえ救われたのでしょうか?
臆病な この感情を捨てることが 出来たなら
貴方を 消し去ることが出来た筈 …なのに
どうして? 震える腕が逸れて行き 壁だけを
傷付け その背中を突き刺すことは 出来なかった

背後から いつもと変わらぬ様子で そっと
近寄り その背中を突き刺すことが 出来たなら
どれだけ私は報われたのでしょうか?

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