刹那の奏法

□music15 忘れてた言葉
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「紫彗ちゃん!?俺、何かしちゃった!?」

「ち、違……」


私が涙を流しちゃったことによって火原先輩が狼狽えてしまっている。

だからこそ必死で涙を止めようとするけど……涙は止まることを知らないみたいに流れ続ける。


「いえ、火原先輩のせいではありませんよ」


私の代わりにか、梁太郎がそう呟いた。


「じゃあ…どうしたの?」


そう聞いた火原先輩に、梁太郎は無言で数メートル先を指差した。

梁太郎が指差した先にはガードレールに突っ込んでいるトラックがある。

それを見た火原先輩は事情を察したらしく……唖然としていた。

未だに止まることなく流れ続ける涙。

どうしよう、どうしよう、どうしよう……

もう、何も考えられない!


「とにかく…学校に行くぞ。立てるか?珠葵」

「あ、うん……」


梁太郎と月森くんに支えてもらって頑張って立ち上がるけど……足に力が入らない。

ガタガタ、と震えるばかりだ。

すると、それを見かねたのか……梁太郎が私を抱き上げた。

いわゆる……お姫様抱っこ、というやつだろうか。


「ごめん…梁太郎」

「気にするな」


月森くんがヴァイオリンを持ってくれて、火原先輩が鞄を持ってくれる。

悪いと思いながらも力なく梁太郎にしがみついてた。


「……火原に月森くん?それに土浦くんと……紫彗さんかい?」


ふ、と後方から声が聞こえた。

車から誰かが降りてくるのがわかって、更にその声音で誰だかすぐにわかった。


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