紅涙の欠片

□Piece08 理不尽な二択
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「まぁ、急に言われて信じられないのも無理はないですよね。どうです?実際にやってみては」


テトラが私に言い放つ。


「…いいわ」


はっと気付いたときにはそう、返事をしていた。

それを聞いたテトラは満足そうに笑い、パチンを指を鳴らす。

すると、部下らしき人がモデルガンを私に差し出し、すぐに的となるものを用意する。


「ではそのラインからあの的の中央を狙ってみてください」


テトラが白いラインを指差しながらそう言う。

私は半信半疑でライン上に立ち、モデルガンを構えた。

……緊張が走る。

でも私は、この緊張感を知ってる。

弓道の、的と定めて弓を放つあの瞬間と……すごく似てる。

無我夢中で3発撃つと、弾は全て的の中心を撃ち抜いた。

このことに私は勿論…テトラ以外の人も驚く。

勿論テトラを除いて、の話だけれど。


「これで解っていただけましたか?記憶はなくても身体が覚えているみたいですよ」


彼の言葉に、納得がいく。

初めてにも関わらず、矢が的の中心を射た…あの時の事とか。


「あなた程の実力があれば十分なはずです。どうです?我々に手を貸してみては」


そう言われて、心が揺らぐ。

両親の仇……

このときの私は「両親の仇を討ちたい」と、そう思ってしまったんだ。

やめておけば良かったのに……

この決断が私の未来を左右することになるなんて…このときは思わなかったのだから。



「……仇を討った後は、どうすればいいの?」

「どう…と申しますと?」

「だって仇を討つということは……相手を殺す、ということなんでしょ?」

「…そういうことになりますね」

「そもそも私にそんなことが…「構いませんよ」

「え?」

「別に構いませんよ。辞めて頂いても」


テトラは、口ではそんなことを言いながらも表情は笑ってない。

きっと断ったら…私を殺す気だ。

長年の感…というやつかな?

なんとなくだけど…そう思う。


「辞め、ない…辞めはしない……けどっ…」

「仇を討った後は……あなたの思うとおりにすればいいのでは?」

「私…の?」

「えぇ。元いたところに戻るのも良いし…我がチェレスタファミリーの一員となって頂いても構いません」

「そう…」

「…ただし、戻れれば…の話ですけどね」


最後にテトラが何かを呟いたようだったけど、私には聞き取ることが出来なかった。


「では柚稀さん、我々に手を貸していただけますよね?」

「……本当に両親の仇なら…私が討つ」

「素晴らしい心がけですね」


……この時、気が付けばよかったんだ。

テトラを始めとしたこの場にいた者全員がニヤリと怪しい笑みを浮かべたのを……


「…それで?やっぱり両親を殺したのもマフィア、なの?」

「えぇ……ボンゴレファミリーの者、です」


テトラがニヤリと笑いながら、私にそう告げる。

私はというと、一瞬自分の耳を疑った。

ボンゴレ、ファミリー……?

それって……もしかして………


「柚稀さん、あなたにはボンゴレファミリー10代目候補、沢田綱吉を殺害していただきます」

「!!!」


『何かイヤな予感がするのよ……』

彼女の…あの時言ってたことが現実のものとなってしまった。

その瞬間、私の中の何かが……切れた。


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