刹那の奏法
□music07 心に絡む感情
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明日、私は数年振りに表舞台に立つ。
久々で凄く緊張すると思うし、怖いとも思うかもしれない。
でも……決めたんだ、乗り切るって。
そして、明日のセレクションが無事に終わったら、今度こそあの時の彼に…会いに行こう。
そう、胸に秘めた。
music07 心に絡む感情
「んー…いいんじゃない?」
コンクール前日の放課後の今、練習室を借りて、湊と最終チェックをしています。
「そう?まだ弾き込みが甘い気がするんだけどな……」
「全く…珠葵は完璧主義者なんだから。いいよ、もう1回合わせよ」
「いいの?」
「明日はもうコンクールなんだもん!珠葵の満足がいくまで付き合うよ、私」
「ありがと、湊」
この数日間、私も今まで以上に練習したし、湊とも何度も合わせた。
それでも…久々のコンクールはやっぱり不安で、弾いても弾いても不安になる。
「珠葵、リラックス。大丈夫、十分弾けてるんだから」
「うん……」
「あ、もうこんな時間……そろそろ時間かも」
「え、あ……そうだね」
練習室は使える時間が決まってるから…こればかりはしょうがない。
湊は十分だ、って言ってくれるけど……やっぱり不安なものは不安だ。
「今日は練習ばっかりしてないでしっかり寝なよ?」
「うん、そうする」
「じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
そう言いながら、校門付近で湊と別れた。
外はもう……真っ暗だ。
ふと前を見ると……数メートル先に、見慣れた人がいた。
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